アマゾン創業から30年、米小売におけるeコマース割合が「横ばい」の理由

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ジェフ・ベゾスがガレージでオンライン書店を立ち上げて7月5日で30年になる。この書店は成長し、人々の買い物の仕方を変えた。創業からわずか5年後の1999年、アマゾンの年間売上はなんと6億5000万ドルとなり、米国のeコマースの約5%を占めていた。だが、米国勢調査局のデータに基づく連邦準備制度理事会(FRB)のインタラクティブなチャートによると、当時、eコマースが小売全体の売上に占める割合はわずか0.6%だった。

それから25年間、eコマースは順調に成長を続けている。アマゾンの直近の米国における年間売上高は5400億ドル(約81兆円)に上ると推定され、小売全体に占めるeコマースの割合は15.6%にまで増えた。

だが、FRBのチャートでは驚くべき変化が示されている。2020年の新型コロナウイルス感染症対策の隔離措置でオンラインショッピングが急増した後、小売全体の売上高に占めるeコマースの割合は2023年第3四半期には15%弱に縮小している。過去4年間で、eコマースの割合はわずか0.5%しか増えていない。

eコマースの売上は今後も伸び続けると予想されているが、そのペースは鈍化している。米調査会社インサイダー・インテリジェンスによると、10年間、20%以上の伸びが続いた後、2022年には伸びは1桁台に落ち込んだ。米国のeコマース売上は今後3年間、毎年約12%成長すると予測されている。

さらに、マーケティング面でも伸び鈍化の証拠が示されている。パンデミックの最盛期には、オンライン広告が活況を呈し、広告料が高騰した。ピーク以降、買い物客は実店舗に戻り、eコマースの売上は伸び悩み、広告料金は下がっている。需要に応えるべく従業員を増やしたメタのようなデジタルマーケティングプラットフォームはその後人員削減を発表している。

こうした明らかな減速は多くの疑問を投げかけている。eコマースのチャネルは飽和しつつあり、小売部門におけるシェアは頭打ちとなっているのだろうか。買い物客は、手軽に安いものをすばやく購入することへの熱意を失っているのか。実店舗での買い物に回帰しているのか。また、この統計は、業界ではオムニチャネルとして知られるハイブリッド化の広がりをどのように考慮しているのか。
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翻訳=溝口慈子

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