宇宙

2024.03.28 15:00

NASAの木星衛星探査機、氷1粒からでも生命発見の可能性 実験で確認

安井克至

細胞物質

今回の研究では、エウロパ・クリッパー探査ミッションに向けた準備として、質量分析計に衝突する氷粒子のシミュレーション実験を実施した。実験では、細いビーム状の液体水を真空中に噴射し、ビームが壊れて液滴になると、この液滴にレーザー光線を照射して帯電させた。この水には、米アラスカ沖の海水に生息する細菌のスフィンゴピキシス・アラスケンシスが含まれていた。実験の結果、エウロパ・クリッパーに搭載される強力な衛星表面ダスト分析装置(SUDA)は、膨大な氷粒子のうちの1粒に含まれる細胞物質を検出可能と考えられることがわかった。

さらに研究チームは、氷殻の割れ目から漏出すると見られる物質のプルーム(間欠泉)によって、細菌の細胞がどのようにして宇宙空間に達する可能性があるかについて説明している。

今回の論文の主執筆者で、ドイツ・ベルリン自由大学のフランク・ポストバーグ教授(惑星科学)は「氷衛星で生命体やその痕跡を見つけるのは、考えられていたよりも容易かもしれない。いうまでもなく、生命がそこにいればの話だが」と指摘している。

衛星探査計画

NASAのエウロパ・クリッパーに加えて、欧州宇宙機関(ESA)の木星氷衛星探査機(JUICE)のミッションでも、間もなくエウロパを調査する予定だ。現在、木星に向かっているJUICEは、2031年7月に到着し、エウロパ、カリスト、ガニメデを詳細に調査する。JUICEミッションでは、木星を67周する計画だ。

宇宙生物学者らのもう1つのターゲットは土星の衛星で、はるかに小型のエンケラドスだ。氷に覆われた表面の下には、塩分を含む温かい海があり、プルーム(間欠泉)によって海水が宇宙空間に噴出している。NASAのエンケラドス探査計画案のオービランダー(OrbiLander)探査機は、暫定的に2038年10月打ち上げ、2050年に到着予定。エンケラドゥスを6カ月間周回してプルームのサンプルを収集した後、着陸探査を実施してより大量のサンプルを採取し、現場で分析する見通しだ。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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