国内

2024.03.23 18:00

なぜ日本のベンチャーが小型ロケットを開発し、射場を建設するのか?

民間の小型ロケット事業の成功事例としては、米国のロケットラボ社がある。商用の小型衛星を打ち上げるために開発されたエレクトロンは、全長18m、太陽同期軌道(SSO、地球を南北方向に周回する軌道)への最大ペイロード150kgというスペックを持つが、これはカイロスとまったく同じだ。近年ではこのロケットによって、日本のアストロスケール社のデブリ除去実証衛星や、シンスペクティブ社の開口レーダー衛星が打ち上げられている。

エレクトロンは液体燃料ロケットだが、エンジンを3Dプリンターで製作するなどして部品点数を減らし、打ち上げコストを抑えている。一方、カイロスは固体燃料ロケットのメリットを最大限に活かし、契約から打ち上げまでの「世界最短」を目指すことで利便性とコスト低減を図る。カイロスを製造するIHIエアロスペース社(群馬県)は、JAXAのイプシロンを開発した企業としても知られ、その技術力と信頼性は高い。

ロケットラボ社のエレクトロンの打ち上げ費用は750万ドル(11億2500万円、1ドル150円換算)とされる。カイロスは未公表だが、今後、日本の衛星運用会社が国内からの打ち上げを望み、スペースワン社が目標とする年20回の打ち上げを実現すれば、おそらくエレクトロンと同程度までコストを抑えることができるはずだ。

なぜ和歌山に射場を建設したのか?

スペースポート紀伊の全景イメージ図。南と東に太平洋が開け、射場としては理想的な立地

スペースポート紀伊の全景イメージ図。南と東に太平洋が開け、射場としては理想的な立地

スペースポート紀伊の建設地として和歌山県串本町が選ばれたのは、南と東に海が開けているためだ。

ロケットは通常、東、または南北に向けて打ち上げられる。ペイロードを地球周回軌道に到達させるには秒速7.9km(時速2万8440km)の初速度が必要だが、東に打ち上げれば地球の自転速度を利用でき、初速度を稼ぐことができる。

また、地球の地表を観測する衛星の場合は南北に向かって打ち上げられる。この場合は地球の自転を活用できないが、衛星が南北方向に周回する間に地球が自転するため、あらゆる地表を観測することが可能となる。
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編集=安井克至

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