国内

2024.03.23 18:00

なぜ日本のベンチャーが小型ロケットを開発し、射場を建設するのか?

日本のスペースワン社の新型ロケット「カイロス」。IHIエアロスペースが製造する(Space One)

また、ロケットを打ち上げる際には「打ち上げウィンドウ」という発射可能な時間枠を厳密に守る必要がある。もしこのタイミングをはずせば予定した軌道にペイロード(人工衛星などの積載物)を投入することができない。液体燃料ロケットの場合はそのウィンドウに合わせて、何時間も前から複雑な準備作業を進める必要があるが、固体燃料の場合は着火すれば瞬時に打ち上げることができる。もし打ち上げが中止されれば、液体燃料はいったんすべて抜かなければならないが、固体燃料ロケットは次の打ち上げまで、機体をほぼそのまま保管できる。
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このように、積載量においては大型液体燃料ロケットに適わないが、小型の固体燃料ロケットには独自のメリットが数多くある。

高まる小型ロケットの需要

カイロスなどの小型ロケットの需要が高まっているのは、小型の人工衛星の打ち上げ機会が増えているためだ。

過去には研究用、技術の実証用などが多かったが、近年では地表を観測する開口レーダー、デブリ除去のためのテスト機、通信、偵察、アミューズメントを目的とした宇宙カメラなど、その用途は格段に広がりつつあり、将来的にはビジネス的に成立しうるものが増えている。

予算の限られた小型衛星を単独で飛ばすには経済的負担が大きい。そのため昨今では主となる衛星を打ち上げる際に、小型衛星を便乗させることが多い。これをシェアライドと呼び、スペースX社がファルコン9(液体燃料ロケット、全長70m)を使って頻繁に行っている。しかし、この方法で打ち上げられる小型衛星は、投入される軌道や打ち上げ時期を主たる衛星の都合に合わせる必要がある。つまり、小型衛星にとっては乗合バスのようなものだ。
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だが、もしカイロスのような低コストの小型ロケットを独自にチャーターできれば、より都合の良いタイミングで、最適な軌道に衛星を投入できる。そのニーズが増している今、小型ロケットが必要とされ、そのマーケットが成長しつつある。

米国の宇宙ベンチャーであるロケットラボ社の小型液体燃料ロケット「エレクトロン」(ROCKET LAB)

米国の宇宙ベンチャーであるロケットラボ社の小型液体燃料ロケット「エレクトロン」(ROCKET LAB)

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編集=安井克至

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