欧州

2024.03.18 12:30

パリで野生のウサギ大繁殖、300匹がやりたい放題 五輪視野に「市外追放」へ

修復費用は6500万円超

過剰繁殖の結果、ウサギの住環境と健康状態が悪化して「死ぬ個体が増え、死んだウサギがネズミに食われる」事態も起きていると警察は説明する。「無数に増えた地下トンネル、荒らされた庭園や植物、配管の損害」の修復にかかる費用は、試算では40万ユーロ(約6500万円)以上にかさんでいる。

芝生と地面の下の状態、修復・維持に要する費用の増大、陸軍からの圧力、そして「光の都」の最高の姿を披露しなければならないパリ五輪を今夏に控えていることを考慮し、パリ市当局はウサギを約70キロ南東のセーヌ・エ・マルヌ県ブレオーに移動放獣することを決定した。

警察によると、先月始まった捕獲作戦はウサギの「ウェルビーイング(心身の健康と幸福)に適した条件下」で段階的に進められているという。

ウサギへのストレスと狩猟のリスク

ここで問題となるのが、なぜブレオーの地元自治体はパリから追放されたウサギを引き取ることに同意したのかという謎だ。複数の説が飛び交っている。ブレオーの住民が分担してウサギの世話をするだろうと報じるメディアもある。

だが、もっと良くない展開を予想する声もある。PAZの代表者はル・パリジャンに、捕獲されたウサギが放たれている地所はセーヌ・エ・マルヌ県狩猟連盟が所有しており、スポーツハンティングに開放されていると語った。

ウサギの移送を担当している警察部署は、放たれた個体が狩猟の対象になることはないと説明している。だが、PAZはまだ納得していない。「ハンターたちはいずれウサギに手を出すだろう」と疑っている。

PAZはまた、ウサギが捕獲から放獣までの間に「強いストレス」にさらされるため、輸送中に恐怖のあまり心停止を起こして複数の個体が死ぬ恐れがあると指摘。この「強制移送」キャンペーンが3月いっぱい続くようなら、新たな法的措置に踏み切ると警告している。

ともあれ、少しばかり安心材料となる歴史的事実を紹介しよう。人間がどれほど足掻こうと、アンバリッドのウサギが絶滅することはない。この地では100年以上前からウサギが巣づくりを続けており、幾度となく繰りかえされる駆除作戦をものともしない特別なコロニー(繁殖地)が形成されている。

何しろ、ウサギはどんどん繁殖する。それこそ「ウサギ算」式に。たとえ捕獲を逃れたのがほんの数匹でも、あっという間に大家族になるのだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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