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2024.03.25 14:15

女性が自分の人生を決められる社会に。福田和子がSRHRの実現に挑む理由

田中友梨
元来の凝り性が真価を発揮し、大学内や隣の東京外国語大学の大学院で授業をするほどに。そのうち、次第に現代につながる問題も見えてきた。

「私の知る限り、少なくとも性産業に関する政策は、一番弱い立場に置かれた人たちではなく、時の為政者の都合を中心に変えられてきました。そして時に政策は、ただでさえ脆弱な状況にある人たちを更なる窮乏に追い込んできました。その事実を目の当たりにする中で、公共政策に関心を持つようになりました。

その中で、買春は性暴力であるとして、性的サービスを買う側のみを罰する法律を世界で初めて導入したが90年代のスウェーデンでした。この法律自体は賛否両論ありますが、欲望より暴力との闘いを優先するスウェーデンにはどのような社会があるのだろうと思い、大学3年から1年間、留学をしました」

「避妊」や「中絶」の選択肢に驚き

留学中、福田はスウェーデンで生活しながら欧州のいろいろな国に行き、性産業やそれにまつわる法律などについて調べた。その中で、そもそも日本には性産業に限らず、避妊や中絶、性教育などの現状に大きな課題があると気づいた。

「日本は欧州に比べて避妊や中絶の手段が限られていることを実感しました。いくら教育で『自分を大事にしましょう』と言われても、自分を大事にするための手段が全然ないんです」

スウェーデンには、若者が性について相談できるユースクリニックが当たり前に利用されている。大学では無料でコンドームが配られていた。避妊具も、日本で一般的なコンドームやピルだけでなく、女性が子宮や膣に入れて使うものなど、いろいろな種類が使われ、若者には無料などより安価に提供されていた。

その上、避妊に失敗した際や性暴力被害にあった際など、妊娠の可能性に直面した場合に使える緊急避妊薬が薬局で安価に買える環境があった。

「国が本当に若者を大事にしようとしていることが、制度などを通じて感じられました。一方で日本では、妊娠を誰にも言えず、一人で出産、女性だけ逮捕されるという事件が繰り返されています。日本の今の環境であれば、そうなるのは当たり前。そうならないために、実現されるべき権利があると思いました」

SRHRを実現できる社会に

日本に帰国後の2018年、福田は性教育や避妊などの充実を目指して政策を提言する「#なんでないのプロジェクト」をスタートした。

国際的にはグローバルでは、1994年の国際人口開発会議で、はじめて人権フレームワークの中リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が組み入れられ、そこから性や身体のことを自分で決められる権利が提唱されてきた。福田は日本でも、当たり前にSRHR(性と生殖に関する健康と権利)を実現できる社会になるよう活動を続けている。
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文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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