教育

2024.03.30 11:00

FC今治高校 学園長の岡田武史が導く 「ヒストリック・キャプテンシップ」をもとう!

Forbes JAPAN編集部
「歴史に残るのはヒーローだけじゃない。ロールモデルがない時代に、想定外の世界を生き抜いていける人は心身ともにタフさが必要。それにひとりでは生きていけない。多様な人を巻き込み、ひとつに束ねていくような人が歴史を変えていくと思う。今治から新しい時代の共助のコミュニティをつくっていきたい」

岡田の掲げる理念に共感し、講師陣には、サイボウズ社長の青野慶久や野球解説者の古田敦也、EXILE HIROなど起業家やアスリートなど各分野のエキスパートが名を連ねる。同校では文部科学省が定める、高校卒業に必要な最低基準に近い76単位に抑え、実践や探求を主とした授業を取り入れる。午前は学内で英語や数学など一般教科を学ぶが、午後は学校を飛び出し、フィールドワークを中心に地域で学ぶ。

例えば、必修科目の「里山未来創造探究ゼミ」では、今治里山スタジアム内の畑で農業に取り組んだり、FC今治のサッカークラブ運営を現場で学んだりする。新しい学びに適応する人材獲得のため、一風変わった入試を取り入れた。一般入試では学科試験がない代わりに、書類選考のうえ、1泊2日のワークショップでパフォーマンス選考を行う。岡田は「中学校で生徒会長をやった人も、少年院を出た人もどんな人でも歓迎する。皆がお互いを認め合い、熱中するものを見つけてほしい」と願う。

今治里山スタジアムの実現のために自らトップセールスを行い、資金調達に奔走してきた岡田は今や地元・今治での人望も厚い。だが、自身のリーダーシップのあり方をこう内省する。

「もう僕は古いタイプのリーダーかもしれない。ひとりで即断即決するし、気が短いし。それでもこの年になってだんだんそういうのが抑えられ、みんなに任せることができるようになった。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の栗山(英樹)監督なんて人が良すぎて勝負に勝てないといわれることもあったけれど、そうじゃないでしょ。いいリーダー像というのは変わってきている。人の主体性を引き出し、サポートできる人がいいよね」。岡田学園長が次世代に向けるまなざしは穏やかだ。


岡田武史◎大阪府出身。監督として1998年FIFAワールドカップフランス大会本戦初出場。横浜F・マリノス監督などを歴任し、2010年FIFAワールドカップ南アフリカ大会でベスト16。中国スーパーリーグ杭州緑城監督も務めた。現在はFC今治運営会社の今治.夢スポーツの代表取締役会長。

文=督あかり 写真=越智祐樹

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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