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2024.03.12 09:15

脱コンプレックス、地域ブランドを世界へ|コシノジュンコ x 岸本和歌山県知事 対談

岸本周平 和歌山県知事(右)とコシノジュンコ氏 背景は、那智の滝を想起させる今井俊満氏の作品「飛花落葉」 

「和歌山コンプレックス」からの転換点が来た 


岸本:和歌山県民って関西エリアのなかでも引け目を感じる人が多く、コンプレックスを持っているんです。関西といえば京都、大阪、神戸が有名ですよね。和歌山は昭和の経済成長至上主義の中で経済的に遅れていたものですから。 
 
だけど21世紀の今なら、山が8割で、那智の滝や熊野、高野山があるという、「精神性の高い和歌山」がひょっとしたらフロントランナーを走れるんじゃないかと私は思っています。 
 
コシノ:その地域から一旦離れてみるとよく見えるわけですよ。中にいると気付けなくても、外から見てみると和歌山には宝物がありますよ。 
 
1890年に串本町沖でトルコのエルトゥールル号が遭難した事故で、地元の人たちが救助や引き上げに協力し、トルコ国民から感謝されたという愛のあるお話は永遠に残るでしょう。ストーリー性のある和歌山をもっと知ってもらいたいですね。 
 glafit代表の鳴海禎造 スモール・ジャイアンツ イノベーターを務める 

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鳴海:和歌山の方以上に、和歌山の魅力を発信いただけるので、すごく嬉しいです。 
 
コシノ:ただ、和歌山って一般的というよりはマニアックな感じですよね。好きな人は大好きだけど、全然興味ない人もいる。 
 
岸本:そうですね。いくつかマニアックな物語がありまして、高野山のような聖なる場所は、かつて女人禁制でしたが、熊野には約1300年前から女性が入れていたんです。だから熊野はジェンダー平等の発祥の地とも言われている。 
 
コシノ:おおらかですね。 
 
岸本:他にも「小栗判官と照手姫」という言い伝えがあります。「餓鬼阿弥」となって歩けない若武者が車に乗って熊野詣をする時、道中多くの人が、途中からは照手姫が車を引いて、湯の峰温泉に入ると蘇る。それは、体が不自由な方が1人でも旅行できたことを象徴する物語で、ユニバーサルツーリズムの発祥とも言える。 
 
コシノ:今はどうなんですか。 
 
岸本:今も熊野の方は観光に来てくださる方を大事にされています。 

神秘的な「穴場」を海外へ

コシノ:海外の方は日本人も知らないようなローカルな場所まで来るのが好きですよね。日本にはそういう神秘的な「穴場」がたくさんあって、特に和歌山には典型的に集まっていますよね。外国人にとっては、和歌山に来ること自体が探検なのかも。 
 
鳴海:もっと海外の方に和歌山の魅力を知っていただくような取り組みをなにかできないですかね。 
 
岸本:ずっとやっているのは、熊野古道とサンティアゴの提携です。ローマ、エルサレムと並ぶキリスト教三大巡礼地のひとつ、スペイン北西部のサンティアゴ巡礼の道と熊野古道が道同士で提携して、25年経つんです。 
 
両方の道を歩いて証明書を出すプロジェクトがあるんです。5000人ぐらいの方が両方の道を歩いていますよ。私もサンティアゴを歩いてきました。 
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聞き手=鳴海禎造 写真=小田駿一 文=督あかり

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