和歌山がいま直面する、観光や産業面のブランド化の課題とは。また、ファッション界で世界的な評価を得るコシノは、その知られざる価値をどう捉えているのか。和歌山で進むブランド化の世界戦略をテーマに、岸本知事との特別対談をお届けする。
聞き手は、地域発の革新に挑む「スモール・ジャイアンツ イノベーター」で、和歌山を拠点に電動モビリティのメーカーを展開するglafit代表の鳴海禎造が務める。
コシノジュンコと和歌山の接点
鳴海:私は和歌山市出身で、コシノさんも参画する「和歌山未来創造プラットフォーム」のワーキングチームで地方創生担当のリーダーを務めています。「無いモノを作って発信する」という視点を大切に、和歌山駅から和歌山城までのけやき大通りのイルミネーション「KEYAKI Light Parade」の企画参加や「TGC和歌山(東京ガールズコレクションin和歌山)」を立ち上げ運営したりしています。ほかにも、和歌山に既にある魅力をリブランディングするなど、違う視点に着目して世界に発信していくことが必要だと考え、さまざまな活動をしています。大阪・岸和田出身のコシノさんが、和歌山に深くかかわるようになったきっかけはなんでしょうか。
コシノ:実は、和歌山に行ってみたいとは思いつつ、長らく足を運ぶきっかけがなかったんです。大阪と東京を行き来することはあっても、和歌山は少し遠いイメージがあって。それから、世界文化遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」の「価値の継承」と「さらなる魅力を発信」するために設立された高野山・熊野を愛する百人の会(2019年和歌山県が発足)に参加したことで、和歌山に伺う機会を得ました。それまで私と和歌山の接点は、あの絵だったんです(*サムネイル写真の背景にある、今井俊満氏の作品)。
岸本:あの絵ですか。
コシノ:私はこの絵の背景にあるストーリーが好きです。作家であり文化大臣を務めたアンドレ・マルローさんが初来日した時、日本には素晴らしい伝統的な歴史があり、フランスから見ても羨ましいのが、伊勢神宮と那智の滝だというんです。それを聞いて、1度は行ってみたいなとずっと思ってたんです。そして百人の会に参加し、ようやく行く機会ができました。また、岸本知事が就任され約半年が経った昨年4月22日、紀南文化会館にて岸本知事、さだまさしさん、和歌山県出身の澤和樹先生(第10代東京藝術大学学長)と一緒にジョイントコンサートをおこないました。これは、和歌山にとって文化の出発点でした。地元も自信がついたと思います。
鳴海:知事とはすごく昔からご縁があったとのことですが。
岸本:40年来のご縁ですね。私が社会人になって東京へ出てきた時に、とあるパーティーで共通の知人にご紹介していただいて。それ以来、家族ぐるみのお付き合いをさせていただいています。