端的に言うと「政治の世界にイノベーションを起こす」という意味だと私は捉えている。昨年、独立した事をきっかけに、これまでは意図的に積極的に発信していなかった政治や選挙に関する話題をする機会を増やす中、「ポリティカルイノベーション」という言葉に出会った。
そのキーワードを発端に、オンラインセミナーで登壇し、昨今起こっている政治や選挙に関する変化の兆しを整理する機会をいただいた。
そのなかで、これまで切り離してきた自身のライフワークであった官民共創プラットフォーム「つなげる30人」と政治・選挙の話題が螺旋状に絡み合い、「政策形成過程の民主化及び多様化」というテーマにたどり着いた。
本記事では、一般的な政策形成過程のスキームやその変化の兆しを整理したうえで、乙武洋匡氏や小池百合子東京都知事が登壇した「政治塾」の取り組みを紹介し、政策形成過程の民主化と多様化の可能性について考えていきたい。
政策形成プロセスに変化の兆し
一般的には「政策(ここでは行政主導の一連の施策を指すことにする)」は選挙によって選ばれる政治家(首長・議員)や行政職員らが主導して立案され、様々な調整の末、多くの場合は議会での答弁や多数決をもって正式決定され、時には予算化され、実現に向けて動き出す。しかし、この「立案から決定のプロセス」は、その時々の優先順位付けや、様々なパワーバランスの影響を受ける場合が多く、ブラックボックス化しているという指摘も否定できない部分がある。その過程では、有識者や専門家から話は聞くが(それをもって第三者性を担保する狙いもあるだろう)、実際の政策の恩恵を受ける当事者からのヒアリングは多くない印象だった。
また決定後の政策に市民側から異議があり、それを覆したい場合、法律で定められる正当な手段として住民投票や裁判などがあるが、基本的にそう簡単には実施できない。さらに民間から政策形成に関わる手段として、ロビー活動があるが、相応の人脈・資金力、そして時間(忍耐力)が求められる。
一方で、近年、閉鎖的だった政策形成プロセスに少しずつ風穴を開ける動きが出てきている。
例えば、課題の当事者やその支援者がオンライン署名等をSNSなどを中心にキャンペーンを行うことで政策形成に影響を与えたり(「政策起業家」とも呼ばれている)、「issues」などのように議員に直接声を届けるプラットフォームサービスが充実したり、課題の当事者自身が立候補し、議員となり、取り組みたい政策を自身が起案するケースも増えてきた。