欧州

2024.03.05

ウクライナ軍のエイブラムス戦車にまた損失 砲兵支援欠く危険な反撃続ける

米陸軍などの主力戦車M1エイブラムス(Shutterstock.com)

ウクライナ東部ドネツク州アウジーウカの西方でロシア軍の進撃を阻むために戦っているウクライナ軍第47独立機械化旅団は、M1エイブラムス戦車をさらに1両と、M1をベースにした戦闘工兵車のアサルト・ブリーチャー・ビークル(ABV)1両を失った。

損失は一時的なものにとどまるかもしれない。とくにM1のほうは、ロシア軍のドローン(無人機)に破壊される前に工兵が回収できれば修復できそうだ。とはいえ、たとえ一時的にせよM1の損失は、アウジーウカの北西数kmにある村ベルディチでの戦闘の激しさを物語る。

ロシア軍の占領下にあるドネツク市のすぐ北西にあるアウジーウカの守備隊は2週間ほど前、弾薬が枯渇するなかでついに撤退に追い込まれた。その後、ロシア軍の第2諸兵科連合軍と第41諸兵科連合軍は、ベルディチなどアウジーウカの西にある複数の村を次の狙いにしている。

M1やM2ブラッドレー歩兵戦闘車、ABVなど米国製の装軌装甲車両の主要な運用部隊である第47旅団は、アウジーウカの北にある集落ステポベに配置されていたが、現在はそこから後退してすぐ西のベルディチで新たな防御線を築いている。第47旅団には当初、M1は31両、M2は90両、ABVは推測だが6両配備されていた。

第47旅団はそこで、「バンザイ突撃」戦術を用いて攻撃してくるロシア軍の突撃部隊とまみえている。ロシア側は、空軍の戦闘爆撃機が滑空爆弾でウクライナ側の防御線に猛爆を加えたあと、BTR-80装甲兵員輸送車などの車両に乗り込んだ複数のグループで突撃することを繰り返している。

ロシア軍の車両は、ウクライナ側の数少ない砲弾をあえて撃たせていると言ってもいい。ウクライナ軍の砲弾は、米議会のロシアに融和的な共和党議員らが昨年10月に米国の支援を阻み始めて以来、絶望的なまでに不足している。

ロシア軍の車両は廃屋など防御可能な陣地付近に歩兵を降ろし、走り去る。歩兵は爆薬を積んだドローンの襲撃などウクライナ側の反撃に備えつつ、第2、第3、さらには第4の味方の突撃部隊が合流するのを待つ。

ロシア側の目的は、ウクライナ側の防御線の内側に拠点を築けるほど多くの部隊を送り込むことだ。対するウクライナ側は、ロシア軍の突撃部隊が到着すればすぐに殲滅することが目的になる。第47旅団はそのために、ドローンの掩護、あるいは地雷を除去するABVの支援を受けながらM1やM2を投入し、支援の手薄なロシア軍の歩兵に接近させている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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