世界最先端の技術を誇る日本
古賀が現在のビジネスに乗り出したのは、前職のコンサルティングファームでの経験がきっかけとなっている。前職時代、古賀は多くの日本企業が植物工場市場へ参入するのを間近で見てきた。しかし、高品質な農作物が新鮮なうちに手に入る日本では植物工場の需要がほとんどないため収益化が難しく、多くの企業が撤退を余儀なくされた。
ならば、国土が広く新鮮なうちに農作物を都市部に運ぶことが難しい米国などであればビジネス化できるのではないか、と古賀は考えたのだ。
「グリーンハウスやビニールハウスといった施設園芸のノウハウや技術は、日本とオランダにしかありません。それにIoTの技術を掛け合わせた植物工場というビジネスは、日本が世界最先端の技術力を誇っています」
今回出資に参加しているNTTや安川電機は、会長や社長が現地視察に訪れた。かつて植物工場のビジネス化を目指した経験のある彼らは、オイシイファームの成長を「圧倒的なスピード感」と評価したという。
植物工場は100兆円マーケットに
「これは21世紀最大のチャンス」だと話す古賀。担い手不足、天候不順、水不足、土地不足といった問題から、農業は既存の業態ではコストが上昇し続ける。農産物の生産方法はこの先20〜30年で植物工場に置き代わり、長期的には100兆円規模のマーケットになると古賀は予想する。
「イチゴの品種開発には、どれだけ資金を投資しても5〜10年はかかります。たとえこれから他国が多額の投資をしたとしても、来年新しい品種ができるわけではない。植物工場は、日本が勝つべくして勝てる領域です」
植物工場を運営するためには、LED、収穫の自動化、空調などの技術が必要だ。現在、同社はすでに存在している製品を組み合わせて成立させているが、植物工場専用の空調などを開発できれば、よりコストを下げ、生産性を上げることができる。
「これは我々一社だけでは取り組めないので、各領域の世界的トップ企業と組んで、オープンイノベーションに取り組みたいと考えています。世界最先端の植物工場のユニットを作り、生産していくという構想を描いています」
例えば今回の投資家である事業会社はまさに手を組んでいく相手だ。NTTはIoT技術などの通信、安川電機は自動収穫向けのロボットといった具合に、200億円の調達資金を投入しながら共同で次世代工場を作り、さらなる量産に挑む。「数十年がかりの大きな取り組みになると思います」。
オイシイファームは今後、農作物のグローバルブランド化に向けて、全米展開を加速させ、認知度の向上を目指す。