労働市場は堅調なのに、雇用不安が広まり、失業のおそれが現実味を増しつつある。履歴書作成サービス「MyPerfectResume」の直近の調査では、米国で働く人の85%が、2024年中に職を失うのではないかと懸念していることが明らかになった。
経済指標は全体として明るい見通しを示しているが、景気回復の恩恵がすべての人に平等に届いているわけではない可能性がある。所得格差はいまだ深刻な問題だ。賃金の伸びがインフレに追いつかず、生活必需品を買うことすらままならない人も多い。
このところ雇用が伸びているのは主に、ヘルスケア、政府機関、レジャー・接客業の3部門に集中している。一方、企業のレイオフ関連データを提供する「Layoffs.fyi」によれば、新年が明けて2カ月もたたぬうちに、テック業界だけで4万人以上が失職した。
履歴書作成サイト「ResumeBuilder」が行った最近の調査では、ビジネスリーダーの37%が、すでに人工知能(AI)による労働力の代替を始めていると回答した。また、調査に応じた企業幹部の44%が、生成AIの効率化により2024年末までにさらなる人員削減を見込んでいると答えた。
今年に入ってからすでに多数の一流企業が、人員を削減する一方で、AIと自動化に投資を再配分する計画を発表している。こうした急成長中のテクノロジーに資金とリソースが回れば、ホワイトカラー専門職の雇用はおびやかされる。米紙ウォールストリート・ジャーナルは、影響はさまざまな業界に及ぶだろうと予測する。
当然のことながら、雇用不安に苛まれる労働者たちは現職を離れようとしない。米労働統計局によると、昨年押し寄せたレイオフの波は委縮効果をもたらし、米国では仕事を辞める労働者が前年比610万人(12%)減少した。12月には月別離職率が3年ぶり最低水準に急落し、コロナ禍後に起きた「大離職時代」は終わりを告げた。