秋元康のアイデアの出し方
渡辺:秋元さんは、新しいアイデアを出すときには、どういう頭の使い方をしているんですか。秋元:過去問を解かない。皆がやらない、斜め上のことをやりたい、みたいな感じかな。
渡辺:でも、社会の期待値に合わせていかないと、ヒットは生まれないんじゃないですか。
秋元:そうなんだけどね。
例えば「グループアイドル」というジャンルの中から、新しい女性アイドルが出てきてヒットしても、「ヒットしましたね」くらいで終わる。だけど、斜め上にある、例えば「高齢者アイドル」が出てヒットしたとしたら、インパクトがあるでしょう。だからやっぱり、「今までにないものをつくる」というのがエンターテインメント基本だと思う。
あと、若い頃はCMソングにしてもタイアップ曲にしてもコンペで競っていて、そのころから「皆が考えそうなことは始めに排除する」という方法をとっていて。企業の曲なら、「明日」「夢」「希望」「光」は入れないとかね。そうしないと勝てないから。
渡辺:それで言うと、僕の中には経営をする上でのフレームワークがあって。技術と社会と規制なんですが。
例えば技術だと、「今までこんなに大きかった半導体を小さくします」といった話で、ムーアの法則の通り将来が予測できる。もう1個は社会で、オリンピックがありますとか、人口がこうなりますとか。それは既定路線じゃないですか。
それに加えて、規制ですね。Web3は特に規制が多いのですが、日本政府は最近かなりWeb3を推してくれていて風向きは良いです。日本はハードウェアで一番を取ったけれど、Web3では完全にボロ負け状態なので、「新しい技術で勝たなきゃ」という期待値があるようです。
……なんか秋元さんに比べたら、僕はちょっとリアリストなのかもしれないですね(笑)
秋元:そうだね。でもそれは、アントレプレナーとしては当たり前だよね。経営者としての責任があるわけだから。
渡辺:ところで、アイデアを出すときに当たり前に出てくるものは省くとしたら、「本当に当たるもの」と「本当に当たらないもの」が残ると思うんですけど、「当たらないもの」をどういうふうにカットしているんですか。
秋元:それは誰にもわからないよね。例えば僕が「絶対当たる」と思っても当たらないこともあるし。
だけど、グローバルに出ていく時に、テイラー・スウィフトやK-POPアイドルがひしめくレッドオーシャンで戦っても、かなり厳しい。だとすると、「Gangnam Style」(PSY)とかピコ太郎のように、「何?」と思うような曲のほうが面白いんじゃないかと思って。