ヘルスケア

2024.03.08 11:15

台湾のヘルスケア市場に世界のスタートアップが熱視線

坂元 耕二

BE HealthのマネージングパートナーであるArthur Chen氏は「台湾の医療機器開発の速度はとても速いものです。これは、医師や患者が前向きに新しい技術を取り入れる国民性やIRB申請の時間が短いこと、国民健康保険が単一支払者制度を導入しており、医療データを比較的簡単に収取できるといった環境によって実現されています。また、医療機器開発が高品質・低コストを実現できるなど、医療分野は台湾において多くのメリットを享受しています。しかし、マーケットが小さいため、海外展開が必要なのです。」と述べ、台湾の医療機器スタートアップの共感を集めた。その海外展開先として日本に注目し、「日本市場の参入について」をテーマに取り上げたわけだが、用意した座席数を超える参加者が集まった。立ち見ながら真剣に話を聞く人々の姿は、台湾の人々の日本への関心の高さを感じさせる光景であった。

また、同日に隣の会場で行われているアジア最大級のスタートアップイベントであるMeet Taipei 2023にも参加した。2014年に始まったMeet Taipeiはこれまで24万人をこえる参加者を誇っており、台湾のスタートアップエコシステムの成長を反映するかのように、Meet Taipeiも素晴らしい盛り上がりを見せている。主催企業BNext Media GroupのCEOであるKatie Chen氏は「Meet Taipeiは、グローバルなスタートアップエコシステムにおけるネットワーキングとイノベーションを促進する目的で続けている」と説明する。


Meet Taipei 2023

第10回目となるMeet Taipei 2023は、「The Future of Future」をテーマに開催され、20代で会社を設立し、活躍している若きリーダーたちが存在感を示した。Y Combinatorからも支援を受けるHeptabaseの創業者 Alan Chan氏、KPMG Private Enterprise Tech Innovatorによって台湾スタートアップのトップ8の1社にも選出されたTuring Certsの創設者 Jeff Hu氏、世界中に100万人以上のユーザーを抱えるAmazingTalkerの創設者 Abner Chao氏の3名は、分野は違うものの、世界市場に進出を視野に入れている点で共通していた。また、台湾のスタートアップエコシステムついて聞かれたJeff Hu氏は、高水準の教育を受け、英語に堪能で、仕事に対する強い責任感を持っている台湾の人々のような従業員は他の国では見つからないと、人材を強みとして挙げた。

また、500 StartupsのCEO兼創設パートナーであるChristine Tsai氏の基調講演も行われ、スタートアップは以前のように簡単に投資家から資金を得られると期待するのではなく、顧客からの資金を頼らなければならないと資金繰りについての考えを述べた。

そして、日本にとっても嬉しいトピックは、台湾の国家発展委員会(NDC)のKung Ming-hsin大臣の基調講演でもたらされた。過去10年でイノベーティブな台湾起業は約3倍になったとし、更なる発展のためにイノベーション活動の国際化を推進していくという。これまでもNDCは日台スタートアップイベントの開催も行うStartup Island TAIWANの後援をするなどの支援を行なってきたが、本イベントでは海外への短期的な訪問で終わらない常設事務所の必要性を述べた。そして、嬉しいことに2024年に東京オフィスの開設を予定していると発表。益々、両国は手を取り合って、イノベーションを共に起こす仲間として歩んでいけるに違いない。

台湾のヘルスケアに世界が熱視線

台湾でヘルスケアに高い関心が集まる理由の1つに、超高齢社会突入への危機感が考えられる。台湾の国家発展委員会が2022年に発表した人口推計報告 (2022~2070年)によると、生産年齢人口は2015年の1737万人をピークに減少が続くと予想されている。一方、総人口に占める65歳以上の割合は、2025年に20.0%に達し、国家発展委員会の定義では超高齢社会に突入する見通しだ。

台湾の医療水準は世界的にも高く評価されており、NUMBEOの「国別ヘルスケアインデックス2024」では、世界一のスコアを獲得している。そのため、自社のさらなる成功のために台湾市場を見ている海外ヘルスケアスタートアップも多い。実際、Meet Taipai 2023でも人気のあるカテゴリーのトップ3にヘルスケアはランクインし、オンラインメンタルヘルスソリューションを提供するiCounseling International Company Limited(香港)やIFlowtech PTE Ltd(シンガポール)をはじめ、10社のヘルスケアスタートアップが国内外から参加し、新たな機会創出に取り組んでいた。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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