転換社債の持ち分まで含めると、ハンファ・エアロスペースの持ち株は約30%だ。「長期戦略のための財源確保」を理由に提携を結んだことで、研究開発施設の開設などが可能になったという。経営陣が保有している持分を縮小してまでも資金拡充のために会社の未来に賭けたことで、市場には衝撃が走った。
改革の背景には、「ニュースペース時代」という宇宙産業の急激な構造変化があった。宇宙事業は国家主導から民間へと移転。イーロン・マスクのスペースX、ジェフ・ベゾスのブルーオリジンなどが代表例だ。民間が主導しているからといって、国家戦略としても宇宙産業の発展は決して無視することはできない。だからこそ、「官民共創で行うのが望ましい」とキムは話す。
「事業計画も重要だが、組織文化の醸成がより大切」と話す彼の執務室のボードには、具体的な事業目標の代わりに組織文化と経営哲学をまとめたメモがぎっしり詰まっていた。
「子会社を除いても従業員は400人を超えました。会社が大きくなるほど、目標やビジョンを伝えていかなければなりません。モノを作る能力や協業する力、働き方など組織づくりのための基盤を強固にすることが私たち創業者世代の最大の使命。そうすれば、グローバルでも通用する競争力に自然につながると期待しています」。