テクノロジー

2024.02.23 13:30

韓国「宇宙開発史」の申し子がつくった、需要急増の人工衛星企業

しかし韓国の宇宙産業の発展とともに、エンジニアとして実力を積み重ねてきたキムを含む技術者たちは、小型観測衛星の国際展開を信じて1999年12月にセトレックアイを創業した。セトレックアイは2021年に大改革を起こした。キム代表ら経営陣が防衛装備大手のハンファ・エアロスペースとの提携を決断したのだ。セトレックアイが新規に発行した株式の20%をハンファ側が取得。

転換社債の持ち分まで含めると、ハンファ・エアロスペースの持ち株は約30%だ。「長期戦略のための財源確保」を理由に提携を結んだことで、研究開発施設の開設などが可能になったという。経営陣が保有している持分を縮小してまでも資金拡充のために会社の未来に賭けたことで、市場には衝撃が走った。

改革の背景には、「ニュースペース時代」という宇宙産業の急激な構造変化があった。宇宙事業は国家主導から民間へと移転。イーロン・マスクのスペースX、ジェフ・ベゾスのブルーオリジンなどが代表例だ。民間が主導しているからといって、国家戦略としても宇宙産業の発展は決して無視することはできない。だからこそ、「官民共創で行うのが望ましい」とキムは話す。

「事業計画も重要だが、組織文化の醸成がより大切」と話す彼の執務室のボードには、具体的な事業目標の代わりに組織文化と経営哲学をまとめたメモがぎっしり詰まっていた。

「子会社を除いても従業員は400人を超えました。会社が大きくなるほど、目標やビジョンを伝えていかなければなりません。モノを作る能力や協業する力、働き方など組織づくりのための基盤を強固にすることが私たち創業者世代の最大の使命。そうすれば、グローバルでも通用する競争力に自然につながると期待しています」。
「未知の世界を知りたいという好奇心だけで宇宙に挑戦する価値は十分にある」(セトレックアイCEOキム・イ ウル)Forbes Korea 2023年10月号 に掲載。

「未知の世界を知りたいという好奇心だけで宇宙に挑戦する価値は十分にある」(セトレックアイCEOキム・イ ウル)Forbes Korea 2023年10月号 に掲載。

写真=チャン・ジヌォン = 文 チェ・ヨンジェ 翻訳=荻島啓子 編集=Forbes Japan編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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