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2024.02.22 15:30

世界で投資加速する生成AI領域。国内最前線企業が見据える「新市場」

岡野原大輔 Preferred Networks代表取締役 最高研究責任者

岡野原大輔 Preferred Networks代表取締役 最高研究責任者

Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望について聞いた。

「想像をはるかに凌駕する使われ方」を見せるChat GPTなどの大規模言語モデル。世界的な開発・投資熱が高まるなか、国内最前線3社の動きをレポートする。


2022年11月にOpen AIがChat GPTを世に送り出してから1年、研究開発からビジネスへの実装、ユーザーによる活用と、生成AIはこれまでに類をみないスピードで世の中に受け入れられている。

大手テック企業によるAI領域への投資は、この1年で大きく加速した。Microsoft、Google、Amazonは、OpenAIやAnthropicといった有力AI開発企業に、数千億円規模の巨額の投資を行うと発表。各社と連携を深め、自社サービスへ生成AIを組み込み、世界規模でユーザーを増やそうとしている。日本企業はいかに活路を見出しているのか。

Chat GPTの登場以降を、プリファードネットワークス(以下、PFN)代表取締役最高研究責任者の岡野原大輔は「(生成AIの)有用性はある程度見えていたものの、これほどのスピードで広く使われるようになるとは思わなかった。プログラムの生成や、プロンプト(AIへのテキストによる指示)自体が急速に進化するなど、想像をはるかに凌駕するさまざまな使われ方をしている」と振り返る。

PFNは2020年頃、大規模言語モデル(LLM)は事業として積極的に取り組まないという判断をしていた。当時から海外の大手テック企業やAI開発企業は基礎研究に取り組んでいたものの、まだその出口が見えない段階で、スタートアップとして限られたリソースを振り向けることが難しかった。

しかし、Chat GPTの登場で、多くの産業領域でその技術が広がっていくことが見込まれ、危機感を覚える。トップダウンで開発に必要な人材や計算資源をかき集め、2023年3月から開発に着手。そして9月、日英の2言語に対応したLLM「PLaMo-13B」を研究・商用での利用が可能なオープンソースソフトウェアライセンスで公開した。

産業向けの基盤モデルの開発を進めるべく、11月には新会社、Preferred Elementsを設立。マルチモーダル基盤モデルの開発を進め、2024年に商用サービスとしての提供を目指す。

「基盤モデルは社会インフラに近い存在になると考えている。その開発に集中するために新会社を設立した。我々の基盤モデルは他社と異なり、これまでに自社で研究や事業で取り組んできた材料科学やライフサイエンスのデータも扱う。研究支援や創薬など、人の作業の肩代わりにとどまらず、これまで解決できなかった問題に新しい発見を生み出せるものにしていく」(岡野原)
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文=加藤智朗 写真=平岩 亨

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