ビジネス

2024.02.22 15:30

世界で投資加速する生成AI領域。国内最前線企業が見据える「新市場」

国内企業のなかでも先行して、5月に日本語特化のLLMを開発したと発表したのがサイバーエージェントだ。実は同社では、Chat GPT登場以前からその開発に着手。16年にAIの研究開発組織を立ち上げて以降、広告事業での活用に取り組んでいたが、コピーライティングへのLLMの応用可能性を見出していた。
内藤貴仁 サイバーエージェント常務取締役 (AI関連事業を統括)

内藤貴仁 サイバーエージェント常務取締役 (AI関連事業を統括)

常務執行役員の内藤貴仁は、「多くの人が使う標準的なLLMやChat GPTなどの会話システム の開発の勝負は、2年前に終わっている」と見る。「GPUの数をはじめ計算資源も圧倒的に差があるなかで、先行企業は研究開発に取り組み続けてきた。これからのAIの開発は、何に特化するか、どういうものだとやる価値があるかを考える必要がある」(内藤)

同社がAIの活用を目論むのは、エンターテインメントの領域だ。10月には「ゲームAI Lab」、「アニメーションAI Lab」を立ち上げ、各分野での生成AIの開発を発表。これまで長年にわたり広告を手がけてきたことが生かされている。「動画やアニメーションなど、尺は短いが多種多様な表現の広告を作ってきた。(これまでに培ってきたノウハウや知見は)生成AIと相性がいい。グローバルで使われる特化型の生成AIが現れていないなか、エンタメにはチャンスがある」(内藤)

ソフトバンクグループ代表の孫正義が掲げる「AI群戦略」をはじめ、長くAIの領域に注力してきた事業会社のソフトバンクも、生成AIの流れに乗る。3月に準備会社を設立、8月にSB Intuitionsと社名を改めてLLMの開発を本格的に開始した。10月には、24年に国内最大規模の3500億パラメーターのLLMを構築すると発表している。

「その革新性から、(生成AIは)iPhoneのように時代が変わるような技術ではないか。全力で取り組むべきだろうという判断があった」と、同社の折原大樹は新会社設立の経緯を説明する。

折原はさらに、特性に応じて海外製LLMを活用すると言及しながら、「サービスに特定の生成AIが組み込まれ、それしか使えないといった状況には注意する必要がある」とも話す。海外製品への過度な依存にも注意を払いながら、同社は国産LLMの開発に邁進する。

「LLMの開発は、アメリカと中国が先行している。その開発には世界中の情報を取得して学習が行われているものの、データセットは英語や中国語が中心となり、結果、LLMの出力には各言語の指向が含まれる。国内の商習慣や独自のニーズに応えられるよう、SB Intuitionsでは日本の文化や価値観をモデル作りに生かして開発を進めている」(折原)
折原大樹 SB Intuitions取締役兼CTO 技術本部本部長。

折原大樹 SB Intuitions取締役兼CTO 技術本部本部長。

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文=加藤智朗 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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