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2024.02.20 15:30

米司法省も高評価!自衛隊出身社長の「日本発AI企業の強み」

Forbes JAPAN編集部

守本正宏 (FRONTEO 代表取締役社長)

リーガルテックや経済安全保障領域に事業展開するFRONTEO。安全保障ジャーナリストの吉永ケンジが代表取締役社長の守本正宏にインタビューした。

Forbes JAPAN2月号は、「『地球の希望』総予測」特集。戦争、気候変動、インフレなど、世界を揺るがすさまざまな事象が起きる「危機と混迷の時代」。2024年の世界と日本の経済はどうなるのか? 世界で活躍する96賢人に「今話したいキーワード」と未来の希望について聞いた。


「元々は宇宙飛行士になりたかった」と話すFRONTEOの守本正宏は、防衛大学校卒、海上自衛隊出身という異色の経歴をもつ。パイロットになり、宇宙飛行士を目指すという幼いころの夢を視力の問題で断念し、自衛官を経て選んだフィールドがリーガルテックだった。

米国では民事訴訟に際し、ディスカバリという証拠開示手続きが求められる。この証拠の解析には多額のコストを要するが、守本は創業前に驚くような現実を知ることになった。「当時、日本には訴訟を支援する会社がなかったため、日本企業は訴訟に巻き込まれると海外の会社を利用せざるをえず、その会社に言われるがままに、海外に機密データを送っていました。しかも、そのデータは日本語のたどたどしい外国人が解析しており、正確性に問題がありました」。

証拠解析の技術やノウハウによって訴訟の結果が左右されてしまう実態を知った守本は、「日本企業を守り、情報社会での平等を実現したい」という信念のもと、ディスカバリとデジタル・フォレンジック(不正調査などで行う電子データの保全・解析)の支援を目的に、2003年にFRONTEOの前身「UBIC」を立ち上げた。

自然言語処理と人工知能の研究成果を応用した自社開発AIエンジン「KIBIT」は、大量のデータを必要とする機械学習のAIとは異なり、人間の行動を数理モデル化することで、少量の教師データから不正や特定の「つながり」を発見できる。

守本は「最初からAIを開発しようとしたわけではありません」と話すが、リーガルテックの現場で、さまざまに交わされる言葉やその機微、曖昧性を数学的なアプローチで解き明かしてきた結果の必然だったと言えよう。

守本は、「日本語の難しさがあったから、自分たちで開発するほかなかった」と振り返る。現在は多言語に対応し、解析精度は高く評価され、その信頼性は米司法省にも認められている。自社開発AIで類似サービスを提供する会社はほとんどなく、米国の司法関係者が話を聞きに来たこともある。
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文=吉永ケンジ 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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