47都道府県の個人所得上昇率1位!15年務める山形県知事・吉村美栄子の「新しい統率力」とは

吉村美栄子|山形県知事

『Forbes JAPAN』2024年3月号は、「『新しいリーダー』を語ろう」特集。『Forbes JAPAN』は2014年6月の再創刊から今年で10周年を迎える。その第一弾企画として、これからドラスティックな転換期を迎える世界経済、日本経済について、ポジティブに変革・創造していくために「リーダーシップ」をテーマに選んだ。これからの時代をけん引する「新しいリーダー」はどう変わるのか。「リーダーシップのあり方」はどう変化するのか。「新しいリーダーシップの教科書」を目指して、リーダーたち100人に問うた答えから私たちに必要な生き方が見えてくる。 

15年という長期間、県民からの支持を集めてきた女性リーダーがいる。改革を推し進めている首長が大切にして心がけていることとは。


「こんな撮影したことないんだけども」

山形県知事・吉村美栄子は、撮影が始まると山形弁でそう話し、カメラマンや取材者、編集者、県職員たちを笑わせた。撮影は和やかに進んだが、実際の吉村の人生はそんなはずはない。吉村は15年という長きにわたり山形県知事を務め、さまざまな変革を行ってきた首長だからだ。

その成果ともいえるのが、2020年度のひとり当たり県民所得が東北1位となったことや総務省のデータをもとに算出した22年度の県民の個人所得がバブル期を上回り、上昇率(1992年度比)が全国1位となったことだ。背景にあるのは吉村による改革だ。高価格帯の県産米「つや姫」、さくらんぼの超大玉品種「やまがた紅王」などの農作物のブランド化や、鶴岡市の「鶴岡サイエンスパーク」を中心にスタートアップ企業が続々と誕生している新産業の創造。そして、県内を縦断する東北中央自動車道が順次開通するなど物流インフラの充実化などを進めてきた。

なぜ、このような大きな変革を次々と行えるのか。よく知る人は吉村を「しなやかに、対立を起こさず、なすべきことを推進し、実績を積むという珍しいタイプの女性リーダー」と評する。吉村は20年間の専業主婦の経歴から、主婦視点での市民感覚が強みという印象があるが、それだけにとどまらない質実剛健さがあるという。「現場主義」「県民目線」「対話重視」を徹底する吉村は自身の変革の進め方について「(県の基本方針である)『人と自然が調和し、県民一人ひとりが幸せでやりがいを感じられる山形』を実現すべく、今までのやり方を見直し、新しいことを始めるのです。もちろん、何かを始めようとすると、反対意見も出てきます。まだまだ男性社会でもあるので、顔を立てて進めないといけない場面もある。ですが、トップダウンで進めるより、生活者の気持ちをしっかり代弁することで、やみくもに進めるより、協力してもらうことができる」と話す。
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文=川上みなみ 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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