霊長類研究の第一人者、僧侶、大企業の元CFO、教育やロボットなどが専門の研究者。バラエティ豊かな各界のリーダーたちに本誌Web編集長の谷本有香が「新しい時代の問い」を聞いた。
谷本有香(以下、谷本):変化が激しい時代にリーダーに必要な要件とは何なのか。従来のようにひとつの解を求めるのではなく、「問い」を考えることから、この時代特有のリーダーのあり方が浮き彫りになるのではないか。総合地球環境学研究所の山極壽一所長、法然院の梶田真章貫主、日戸興史元オムロンCFO、京都大学総合博物館の塩瀬隆之准教授の4人をお招きし、新しい時代にどんな問いが想起できるのかをお伺いしたい。まず、『問いのデザイン』という著書も出されている塩瀬先生から、なぜ今、解ではなく問いを立てることが重要なのか、教えてください。
塩瀬隆之(以下、塩瀬):もともと私は人間とコミュニケーションをするロボットの研究をしていました。ロボットに正確にしゃべらせるのは意外と簡単ですが、聞き上手をつくるのはすごく難しいんです。相手の話をしっかり聞いて、適切なタイミングでうなずき、さらに相手に関心をもって問いかけることができない。では、人間はどうやって相手に「問うている」のか。そこに興味をもつようになり20年ほど研究してきた一つの節目が『問いのデザイン』という本でした。
誰もが問いをデザインしていくことが大事だと伝えたかったのですが、簡単にできるという意味ではありません。今まで多くの人は、ただ人から与えられた問いに反射的に答えようとするばかりで、自ら問い直すという機会をもてずにいました。しかし、コロナ禍で生じた断絶が時間を生み、与えられた目の前の問いが本質的な問いかどうかを疑う機会ができた。誰かから与えられなくても、自らの内に問いが存在する事実に気づき始めた。でも、まだその問いが本当に根源的かどうか、自信がもてないのかもしれません。
谷本:まず、問いを考える前提として、山極先生、これからの時代をどのように定義されているのでしょうか。