AI

2024.02.18 08:00

AIで「全身スキャン」を迅速化、予防医療の革命に挑むスタートアップ ただし専門家は懸念も

エズラの全身MRIを常用する起業家で富豪のブライアン・ジョンソン(C)instagram @bryanjohnson_

キム・カーダシアンも検査を推奨

ガルによると、エズラの顧客で最も多く報告される所見のひとつは前立腺がんで、進行が遅いため、ほとんどの場合「経過観察でよい」という。次に多いのは甲状腺結節だが、そのほとんどは良性のものだという。「私たちは、問題があると思われる所見にのみ対処する手助けをしています。しかし、そのためには、より多くのスキャンを行うことが必要なのです」と、ガルは話す。
advertisement

しかし、「そもそも検査をしなければいいのです」、と放射線科医のダベンポート教授は主張する。彼によると、甲状腺がんの罹患率の増加は近年、世界中で見られている傾向だが、特に韓国で顕著だという。しかし、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に発表された研究によれば、韓国では甲状腺がんの患者数が世界で最も多かったにもかかわらず、死亡者数は増加しなかった。その結果、何万人もの人々が甲状腺を摘出され、本来は不必要ながんの治療を受けることになったという(ただし、ガルに言わせればエズラは甲状腺結節が発見された場合に、それを監視し続けることを推奨しているが、切除することまでは推奨していない)。

一方で、エズラが500ドルのMRI検査を実現したとしても、誰がその費用を支払うのかという問題が立ちはだかる。一般的に医療保険会社は、医学的に必要なものにしか保険を適用しないことに固執しており、現在のところ、このような全身MRI検査を提唱する医学会は米国に存在しない。米国放射線学会は、昨年の声明で、「現在までのところ、全身スクリーニングが費用対効果に優れ、延命に効果的であるという文書化された証拠はない」と述べていた。

しかし、ジョンズ・ホプキンス大学の医療政策・会計学教授のゲー・バイによれば、医療保険会社はおそらく検査費用を支払わないだろうが、従業員の医療費全般を負担している雇用主は支払う可能性があるという。ガルは、エズラがすでに一部の雇用主と、特定の従業員にスキャンを提供する契約を結んでいるとフォーブスに語った。
advertisement

ガルは、同社が今後数年以内に発表する予定の偽陽性率に関するデータが、反対派の考え方を変え、保険会社も乗り気になると考えている。一方、エズラの新規顧客のほとんどは既存顧客からの紹介によるものだという。

「私は、この分野の競合企業がほかにも存在し、キム・カーダシアンもスキャンを受けていることをとても嬉しく思っています」と彼は語る。リアリティTVのスターであるカーダシアンは、エズラのライバル企業で全身MRIのスタートアップであるPrenuvo(プレヌーボ)を気に入っており、インスタグラムの投稿で、同社の2500ドルの検査を受けたと述べている。「彼女のような著名人の顧客が居ることも、この市場の成長に役立っています」とガルは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事