経済

2024.02.23

拡がる「ライフスタンス」エコノミー モノの価値と消費をどう変えるか

PARaDE代表 中川 淳(撮影:山田大輔)

はじめまして、PARaDE代表の中川淳です。『拡がる「ライフスタンス」エコノミー』と題して、連載をスタートさせていただくことになりました。お付き合いのほどよろしくお願いします。さて、今回は初回ということもあり、そもそも「ライフスタンス」とは何なのか?というお話から。


「ライフスタンス」とは何か?

皆さんは、普段どのような基準でモノを選んでいるだろうか? 私は最近CFCLのカーディガンを買ったのだが、購入に至るまでに1カ月かかった。というのも、そのモノの品質や機能、デザインはもちろん、会社のビジョンやパーパス、社長のメッセージ、持続可能性に対する活動、作り手の熱量などをみていたら、時間が掛かってしまったのだ。

ちなみにCFCLは社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際認証「B Corporation」を日本のアパレルで初めて取得したブランド。私の場合は製造小売業を生業としているので、少々極端かもしれない。でもモノを選ぶ際、そのように多様なファクターを気にする方が増えているのではないだろうか。

このような消費の在り方を、我々は「ライフスタンスエコノミー」と呼んでいる。聞き慣れない言葉だとは思うが、ライフスタンスとは「一人ひとりの、生きかたに対する姿勢や態度。企業やブランドの、哲学やビジョン」とPARaDEでは定義づけており、そこに重きを置いて購買の判断をすることをライフスタンスエコノミーと呼んでいる。

Getty Images

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こう説明すると大抵の場合、「ライフスタイルとは違うのか?」と聞かれる。
 
ライフスタイルは、モノの品質や機能の良し悪しに加えて、背景にあるブランドの世界観を重視して判断する在り方だ。そのブランドへの憧れやそれが存在する素敵な暮らしを、主に視覚的に訴えかける。アップルやビームスなどがこれにあたるであろう。

これに対し、ライフスタンスをイメージしやすいブランドはパタゴニアだ。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げ、環境負荷を極力下げたプロダクトの展開はもとより、環境再生型の農業の取り組みやドキュメンタリー映画の制作など、社会課題の解決に直接つながる経営スタイルを確立している。お客さんもそのようなストーリーを含めて、パタゴニアを支持している。

例えば着ている服や乗っている車、住んでいる家のインテリア、これらはライフスタイルで、視覚的に捉えることができる。しかし着ている服のブランドがかぶっていて、好きな椅子が同じ2人の人がいたとして、各々の人の人生に対する価値観や哲学ははたして同じだろうか?たぶん違うだろう。

それらは視覚的にとらえることはできない。長く付き合っていく中で何となく理解できていく類のものであろう。個人であれブランドであれ企業であれ、それを「ライフスタンス」と言う。ライフスタイルは1枚の写真で伝わるが、ライフスタンスは長年の行動でしか伝わらない。
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文=中川淳 写真=山田大輔 構成=国府田淳

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