同団体のジョン・シェルトン情報部長は「診断から治療開始まで、人々はあまりにも長く待たされており、待ち時間の目標は達成されたためしがない」と指摘。がんの生存率は十分に改善されていないと訴えた。
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究者が主導した最新の分析では、同国でがんを患ってから10年以上生存している割合は、2010年から2011年に47.9%から49.8%に上昇した。しかし、生存率の伸びは近年著しく鈍化しており、がんに関連する団体や政策立案者は警鐘を鳴らし、緊急対策を求めている。
英国王立がん研究基金のミシェル・ミッチェル最高経営責任者(CEO)は「英国のがん生存率は過去最高となり、これはがんの克服に向けて私たちがともに前進していることを示している」と評価。他方で「ここ数年、改善の速度が鈍化していることが懸念され、昨今のがん患者は検査や治療を受ける上で、不安とかつてないほどの長い待ち時間に直面している」と述べた。
英国では2020年の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や新型コロナウイルスの流行といった原因により、すでに苦境に陥っていた医療制度があらゆる面で打撃を受け、がん生存率の改善に向けた目標の達成に苦慮している。その結果、診断や治療の開始までにかかる待ち時間が長くなり、他の高所得国に遅れをとっている。直近ですべてのがん治療目標が達成されたのは、9年前の2015年までさかのぼる。英国では2040年までに年間約50万人が新たにがんと診断されるという予測があるが、現在の医療制度ではそれに十分対応できないものとみられる。
同国には、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの検診プログラムがあり、それによって毎年約5000人以上の命が救われていると考えられている。だが今回の報告書は、喫煙者または過去に喫煙していた55~74歳の国民に肺がん検診を実施すれば、さらに年間約1900人の死亡を防ぐことができると指摘している。喫煙は依然として英国におけるがんの主な原因で、1日当たり約150人が死亡している。この問題に取り組むため、英政府は世代別の禁煙策を提案しており、これが実現すれば、現在の若年層が国内で合法的にたばこを購入することはできなくなる。
英国王立がん研究基金のシェルトン部長は「喫煙はいまだに予防可能な死因の上位にあり、だからこそ私たちは次世代が喫煙依存症になるのを食い止め、毎年何万人もの早すぎる死を防ぐことができるよう、すべての国会議員にたばこ販売の年齢制限に関する法案を支持するよう呼び掛けているのだ」と説明した。
(forbes.com 原文)