この衝撃的な内容は、プリンストン大学の経済学者アン・ケースとアンガス・ディートンが発表した最新の研究「米国における学士号を持つ成人と持たない成人との間で拡大する死亡率格差に関する説明」から明らかになった。これは「ブルッキングス経済活動に関する論文(BPEA)」秋号で特集された。同テーマに関するケースとディートンによる過去の研究は、著書『絶望の死と資本主義の未来』に収録され、高く評価されている。
ケースとディートンは、学歴が記載された死亡記録を用いて、大半の人が教育を修了する25歳からの平均余命を学歴別に計算した。調査期間は1992~2021年。研究の中で、米国人の人生の道筋を分けるものとして、大卒の学位が重要性を増していることが浮き彫りになった。
4年制大学卒業者の25歳時点の平均余命は、新型コロナウイルスが流行する前年には59年に達していた。別の言い方をすれば、大卒者の平均寿命は84歳で、1992年の79歳より延びていた。ところが新型ウイルスが流行すると、この層の平均余命は1年縮まった。
一方、大卒でない層の平均余命は2010年頃をピークに下降している。この層の人々の平均余命は学位を持つ人々より2年半短く、1992年には51.6年だった。これは、学位を持たない人は平均して77歳近くまで生きるということだ。だが、2021年には49.8年(約75歳)まで短縮し、大卒者と比べると約8年半も命が短くなった。この層の平均余命は、新型ウイルス流行中に3.3年縮まった。
言い換えれば、大卒者とそうでない人の平均余命の差は1992年には2.5年だったが、2021年には3倍以上に拡大したということだ。
米紙ニューヨーク・タイムズに掲載されたケースの論説によると、米国では1970年代に平均寿命が毎年約4カ月伸びていた。1980年代には、他の先進国の平均寿命と同程度になった。それ以降、他の国々は進歩を続け、年間で2カ月半以上も寿命が延びているのに対し、米国は徐々に、そしてその後、急速に遅れをとるようになった。
ケースはこうした学歴による寿命の格差を「衝撃的かつ特殊なこと」だと指摘。ディートンとの共同研究で過去に同様の例を発見したのは、ソビエト連邦崩壊後の旧共産圏の東欧諸国だけだと説明した。「これらの国々と同様、米国も教育水準の低い人々を見捨てており、この国の現状に対する激しい非難を生んでいる」