北米

2023.10.31 09:00

非大卒者は短命 学歴による平均寿命の格差が米国で拡大

ブルッキングス研究所のインタビューで、ケースは次のように指摘した。「国内総生産(GDP)は好調かもしれないが、人々、特に教育水準の低い人々はどんどん死んでいる。拡大し続ける豊かさの大部分は、高学歴のエリート層にもたらされている。それはごく普通の労働者には行き渡らない」

学歴による平均余命の格差、つまり多くの異なる死因に存在する格差は、恐らく複数の要因によって説明できるだろう。米国は、高学歴者にはより多くの報酬を与えるが、大学卒業資格のない人に対しては見過ごすか罰する国だと言ってよい。医療の受けやすさに差があること、大卒でない人ほど不健康な行動をとりやすいこと、生活環境の安全性に差があること、自殺や薬物の過剰摂取、アルコール依存症といった「絶望の死」が多いことなどが原因として考えられる。

ケースとディートンは「人々が働き、生活する地域社会における、より広範な社会的・経済的な力」を「間接的な力」と呼び、この力のせいで格差が生じたと非難している。その中には、教育水準の低い労働者の方が雇用市場で不利なことや、最低賃金、労働権法、公害、銃、たばこ税や規制などを含む「企業が後援し、共和党が支配する州議会で可決された法律による健康への悪影響」などが含まれる。これらはいずれも、大卒の特権を享受している人々より、労働者階級の人々を苦しめている。

こうした社会的・経済的格差がもたらす悪影響については、数多くの証拠がある。現在、致命的な危険性を示唆するデータが蓄積されつつある。

国民全員が大学を卒業することを期待するのは、この問題に対する現実的な答えではない。そうではなく、多くの仕事に就くための条件として大学の学位が求められることを減らすことが正しい方向への一歩につながると、ケースとディートンは述べている。その動きはすでに始まっており、就職に必要な資格として学士号を条件から外す大企業や州政府も増えている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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