「上がったものは必ず落ちる」を防ぐ、幸福感を長続きさせる科学的方法

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うれしいことがあり、心温まる気持ちに満たされながら、ふと「この良い気分はいつまで続くのだろう」という思いが脳裏をよぎって不安になる──そんな体験をしたことはないだろうか。幸福感が一時的なもので、そのうち消えてしまうというのは、私たち誰もが味わうよくある体験だ。

「上がったものは必ず落ちる」というこのロジックは、現実の幸福感の推移とも一致する。2020年に発表されたある研究では、仕事で昇進するとウェルビーイング(心身の満足感)や幸福感は上昇するが、それは最初の3カ月だけで、その後の効果はまったくないか、あってもごくわずかだという結果が出ている。

しかし、「上がったものは必ず落ちる」のには理由があり、より大きな視点が欠けているせいだとしたらどうだろうか。たとえば昇進した事実を意識的に活用して、幸せな出来事が続けざまに起きるようにできないだろうか? こうした発想から生まれたのが「幸福の地平線」を広げる取り組みだ。

ここでは、幸せを感じる時間を伸ばし、その効果を継続させるのに役立つ、科学的な裏付けに基づいた方法を2つ紹介しよう。

1. 幸せな時を「本当の友達」と分かち合う

2022年に学術誌『Personality and Individual Differences』に掲載された論文は、「自分で自分を大事にする」行為には、これまであまり触れられてこなかったメリットがあるとしている。それは、勝利の栄光を心ゆくまで満喫し、うれしい気持ちに浸ることを後押しする効果だ。

論文の主著者ベンジャミン・シェレンバーグによると、「自分で自分を大事にする傾向が強い人は楽しい時間を意識して味わう能力が高く、『自分はポジティブな体験を満喫するに値する』との認識がある」という。

こうした資質は、自分自身への接し方について、率先して手本を見せてくれる人たちに囲まれることで養われる。親切心や理解、支援の気持ちを示してくれる人たちに囲まれていれば、こうした資質を自分の内面にも取り込みやすく、実際に自分を大切にできるようになるというわけだ。

時として人は、成果を祝う際、幸せな気分を盛り上げてくれるタイプの友人にばかり目を向けがちだ。だが、浮かれたムードの後には虚しさが忍び寄ってくる。こうした「友人」たちは、どれだけ「楽しい」「クールな」人々であっても、こちらがどん底に陥り、助けや後押しを必要としている時には一緒にいてくれないことがわかっているからだ。

「良い時」にだけ仲良くするような人たちと短い幸福感の高揚を追い求めるよりも、うれしい時こそ「本当の友達」が誰なのかをしっかり見極めるようにしよう。

自分の成功や楽しい時間を、つらい時にも支えてきてくれた人たちと共に祝えば、この後何が起きても、自分を気遣い、行く先に立ち塞がる障壁を乗り越える手助けをしてくれる存在が周りにいると実感できる。これは全体的なウェルビーイングを向上させ、「幸福の地平線」を広げる鍵となる。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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