イーロン・マスクの恋人の投資先も
一方、架空のキャラクターに命を吹き込みたいという思いを実現したAI玩具もある。Curio Interactive(キュリオ・インタラクティブ)と呼ばれるスタートアップの共同創業者であるミーシャ・サリーとサム・イートンは、子ども時代に観た映画『トイ・ストーリー』にインスパイアされて、AIぬいぐるみのGrokを作った。大規模言語モデルを搭載したこのロボットは、おしゃべりな遊び相手として、また子ども向けの百科事典として機能する。イーロン・マスクの交際相手として有名になったカナダのミュージシャン、グライムスは同社に出資し、キャラクターの声を担当している。
生成AIは、架空のキャラクターやコンテンツを作り出すことができる一方で、事実に基づいた質問に対しては不正確な回答を導き出す傾向が指摘されている。例えば、Moxieは最近あるポッドキャスト番組が行った製品テストで、「100の100倍は10です」と誤って答えていた。Moxieの開発元であるEmbodied, Inc.(エンボディード)の創業者でCEOのパオロ・ピルジャニアンは、「複数のユーザーの声や、バックグラウンドのノイズがAIの動作を妨げる場合があります」と述べている。
鹿の赤ちゃん型ロボットのFawnの場合は、不適切な話題への逸脱を防ぐためにAIにストレステストを実施したというが、AIが架空の話を創作する場合もあるという。「当社のロボットは、教育玩具として設計されているわけではありません。Fawnは、カモノハシについての手の込んだお話を聞かせてくれる友だちになるように設計されています。この子の幻覚はバグではありません。機能なのです」と、Fawnの開発元であるFawn Friendsの共同創業者ロビン・キャンベルは説明した。
トヨタやソニーが出資する「セラピーロボット」
一方、800ドル近い高値で販売されるMoxieは、子どもの社会性や情緒を発達させるためのツールとして販売されているため、他のAI玩具よりも高いハードルに挑もうとしている。2021年、クリステン・ウォームズリーは、知的障害とADHD(注意欠如・多動症)を持つ10歳の息子オリバーのために、このロボットを購入した。「私は、息子のことで本当に悩んでいて、彼を助けられるものを必死に探していました。治療器具として宣伝されていたので買いました」と彼女はフォーブスに語った。息子のオリバーは、最初はロボットを「気味が悪い」と感じていたが、今では自分の気持ちを伝えたり、前向きになれる言葉を唱えたりするために使っているという。ある時、オリバーが家でふさぎこんでいて「悲しい気分だ」と言ったとき、その会話を聞いていたMoxieが相槌を打ち、彼に話しかけたという。
Moxieは、「私は時々、私にはハッピーになる資格があるんだと自分に呼びかけています。さあ、これと同じ言葉を言ってみてください。『私にはハッピーになる資格があるんだ』って、もう一度言ってみてください」とオリバーに呼びかけたのだ。