サイエンス

2024.01.26 18:30

マナティー932頭が集結! フロリダの州立公園で記録更新

水中をゆったり泳ぐマナティー(Shutterstock/Andrea Izzotti)

水中をゆったり泳ぐマナティー(Shutterstock/Andrea Izzotti)

米フロリダ州オレンジ市にあるブルースプリング州立公園に今月21日、マナティーの大群が現れ、関係者を驚かせた。その数なんと932頭。今月1日に同公園で記録された736頭を上回り、最多記録を更新した。

公園当局は、市民サポート団体「フレンズ・オブ・ブルースプリング州立公園」が運営するフェイスブックページで、記録的なマナティーの大群出現を報告した。

マナティーが冬に大群をつくるのは、冷たい水が苦手だからだ。「マナティーの越冬には一般的に20度以上の水温が必要だ。そのため、秋になると湧水や発電所の排水口など、水温の高い場所に集まり始める」とフロリダ州魚類野生生物保護委員会(FWC)は説明している。公園名の由来である湧水ブルースプリングの水温は、通年で22度前後を保っている。

932頭という壮大な数は、州立公園の自然保護管2人が複数の観察ポイントから数え上げたもの。2人で並んでそれぞれ個別に数えた結果、数字は一致した。「5頭だろうと900頭だろうと、マナティーが湧水のそばに避難しているのを見るのはいつもわくわくする」と園長のダスティン・アレンは語った。

その後、マナティーの集団避難は落ち着きを取り戻し、25日には127頭となった。

水に集まるブルースプリング州立公園のマナティー、2022年1月17日(Zack Wittman for The Washington Post via Getty Images)

水に集まるブルースプリング州立公園のマナティー、2022年1月17日(Zack Wittman for The Washington Post via Getty Images)

ブルースプリング州立公園とマナティーの歴史を振り返ると、今回の大群出現はいっそう特別な感慨を生む。公園当局がマナティーの頭数調査を始めた1970年代、その数は平均36頭だった。今年に入るまでは、昨年1月の729頭が最多記録だった。

人魚のモデルともいわれるマナティーは草食性の動物で、水草を食べる姿から「海牛」の名でも知られている。フロリダマナティーは西インドマナティーの亜種で、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種レッドリストでは絶滅危機一歩手前の「危急種」に指定されている。

米海洋哺乳類委員会(MMC)によれば、マナティーの主な死因は、船舶との衝突、生息地の喪失、異常な寒波、赤潮などだ。動きのゆったりしたマナティーは浅瀬の水面近くで過ごすため、船のスクリューに巻き込まれやすい。フロリダ州ではマナティー保護区を指定し、船の速度を制限しているほか、人々にマナティーから目を離さないよう呼び掛けている。

マナティーが生きていくには、水が温かく安全な隠れ処が重要となる。FWCは2020年からフロリダ州東海岸で死んだマナティーの事例調査を行っているが、大西洋沿岸のインディアンリバーラグーンでは、水質の悪化、藻類の繁殖、海草の減少がマナティーの死因となっている。「冬の寒さは、慢性的な栄養失調ですでに弱っているマナティーの健康状態にさらなる負荷をかける」とFWCは指摘する

ブルースプリングに集結したマナティー932頭がどれほど壮観な眺めだったのか、実感するのは難しいかもしれない。成獣の平均体重を約450キロとして、幼獣の頭数を考慮した上で計算すると、合計400トン超のマナティーが押し合いへし合いしていたことになる。何とも圧巻だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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