リーダーシップ

2024.01.27 13:30

「ジャングルと未来の歩き方は似ています」未来会議の緊急提言!人を導く「問いの力」

個別最適から全体最適へ

日戸興史(以下、日戸企業経営やビジネスの視点で見ても、世の中まったく読めない時代です。何が正解かわからないし、何が売れるかわからない。混沌のなかで企業経営をしなければいけない。

そのなかでまず大事なことは、その企業のミッションや存在意義を明確に定義することです。みんなで議論して、対話のなかで共感を覚えてつくり上げていく。つくったミッションが正解かどうかはわかりません。けれども、やる人の共感や腹落ち感があって、みんなで共有できているということが重要なんです。さらに言うと、自分たちがこうありたいと思う姿が定まったときに、その問題や課題の定義も重要です。目標と現状のギャップが課題であり、現状を正しく認識しないと問題を正しく定義できません。問題を定義できなければ、いくら解いても正解は出ないですよね。

もうひとつ大事なのが連結です。連結とは、自立性をもった組織や人が、同じ目標や目的の達成のために、チームとして一枚岩で進めることです。ジャングルの話のように、お互い助け合うというのは、結局チームだと思います。個別最適から全体最適の組織運営に変えていかないといけない。個々の意識を変えていくために、問いの力を使うことは有効だと思います。
日戸興史◎元オムロン取締役執行役員専務CFO兼グローバル戦略本部長。1983年に立石電機(現オムロン)に入社。技術本部、米国シリコンバレー駐在などを経て、2017年から23年までCFOを務める。現在、ワコールホールディングス社外取締役、日本CFO協会理事などに就く。

日戸興史◎元オムロン取締役執行役員専務CFO兼グローバル戦略本部長。1983年に立石電機(現オムロン)に入社。技術本部、米国シリコンバレー駐在などを経て、2017年から23年までCFOを務める。現在、ワコールホールディングス社外取締役、日本CFO協会理事などに就く。

山極:私が京大の総長の時に心がけたのは、場づくりです。私が率先して話をしてしまったら、それぞれの理事が自分の意思でさまざまな提案をしなくなってしまう。私はまとめ役に徹する。それは従来のリーダーの姿勢とは違って、むしろファシリテーターかもしれません。京大は自由の学風で、誰もが自分の問いや誘いかけを自由にできる。それをいちばん生かしたかたちで経営に役立てようとしました。

私が京大の総長の時、「座右の銘は何ですか」と聞かれると、「ゴリラのように泰然自若」と答えていました。リーダーは動いてしまってはいけない。動かないから、周囲の人たちがいろんなことを言ったりやったりできる。中心が動いてしまったら、みんなソワソワして不安になってしまいます。

塩瀬:泰然自若の態度でいるために、リーダーに必要なのは、覚悟やみんなを信頼するということでしょうか。どういう力をもつといいんですか。

山極:緊張感と信頼感をバランスよく維持すること。信頼感だけだとなめられちゃうんです。「こいつは何を言っても聞いてくれる」と。「生半可なことは言えないぞ」という緊張感をどうやってつくるかです。自分が言ったことは自分にはね返ってきます。それが問われるということを、常にみんなが意識して、覚悟をもって発言し、実行すること。それをきちんと支えるのがリーダーの役割です。だから、信頼だけじゃ駄目なんです。

梶田:リーダーは、究極は、言葉では導けないと思っています。要は、姿勢で示すしかない。だから、自分の生き方でそれを見てもらうしかない。もちろん御縁が大事だと思っているので語るわけですけれども、語ったからといって、その人がそうやっていなければ信頼を得られないわけです。だから、語った通りに生きられているかということを常に問いながら、できていないことも多いのですけれども、究極それしか導く方法はないんじゃないかと私は思っています。

山極:言葉は裏切る。ゴリラから習ったのは、背中で語れる人がリーダーだということです。(続きは、『Forbes JAPAN』3月号で)
谷本有香◎Forbes JAPAN Web編集長。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務め、2004年に米国でMBA取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターを経て現職。トニー・ブレア元英首相、スティーブ・ウォズニアックなど4000人以上取材。

谷本有香◎Forbes JAPAN Web編集長。証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務め、2004年に米国でMBA取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターを経て現職。トニー・ブレア元英首相、スティーブ・ウォズニアックなど4000人以上取材。

文=成相通子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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