ロシアは現在、領土的野心を隠さないウクライナ東部4州のうち、ほぼ全域を占領できたのはルハンスク州だけにとどまっている。松村氏はロシアの思惑について「州の全域を併合するとは明言していないザポリージャとヘルソン両州はともかく、少なくとも親ロ派が2014年以来『ドネツク人民共和国』の領域だと主張してきたドネツク州全域を占領しない限り、停戦には応じられないでしょう」と語る。NATO内に「ロシアとの全面戦争」を懸念する声が広がれば、NATOの防衛力強化を求める声が上がるだろうが、その一方で、ウクライナへの支援に及び腰になる国が、ハンガリーのほかにも出てくるかもしれない。そうなれば、ドネツク州を占領するために必死になっているロシアにとって好都合な結果が生まれる。
松村氏は、プーチン大統領はさらにウクライナの「非ナチス化・非武装化」も掲げているため、仮に停戦が実現しても、ゼレンスキー政権の打倒とウクライナのNATO加盟阻止に全力を挙げるだろうとも予測する。ただ、「ロシアがNATOに対する攻撃の構想を持っているとは思えません」とも語る。「プーチン大統領はNATOと戦争になれば、ロシアは勝てないと思っているはずです。そのため、ウクライナ侵攻へのNATOの介入を防ごうと必死になって情報戦などを展開しているのです」という。「最悪の事態に備える必要はありますが、粛々と準備すれば良いと思います。声高に、ロシアが攻めてくると叫び続けると、逆にロシアが仕掛ける情報戦の思うつぼになりかねません」
現在のNATOとロシアによるやり取りは、台湾を巡って中国と相対する日本や米国にとっても参考になるだろう。
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