キャリア・教育

2024.01.27 11:00

無職は弱者なのか。 経験者500人に聞いてわかった「離れる」の大切さ

田中友梨

——私も当事者なので、少し自分の話をさせてください。キャリアブレイク研究所のアンケートにも書いたのですが、私はこの期間で自分の人生にとって何が大切かを見直すことができました。

それまでは社会的な評価や高い収入を得なければ「存在価値がない」と思っていたのですが、そうではない、と。生活ができるレベルのお金を稼ぎながら、自分の心が動く仕事をし、「生きていてよかった」と思える時間を増やすことを大切にしたいと思うようになりました。


キャリアブレイクをした人は、「断る」とか「離れる」ということを経験しているんですね。今、猛スピードで変化を続け「右ならえ」で動くことが良しとされる社会の中で、ある意味「ストップ」をかけている。

キャリアブレイクの「ブレイク」には、「壊す」という意味も含まれているかもしれない、と思う時があります。仕事から離れることで、自分が気に入らなかったり、足かせになったりしている価値観を壊そうとしているのではないでしょうか。

僕の活動の前段に、過労やハラスメント、あるいは男性優位社会の中で働く女性とか、そういった「弱い立場で働く人を助けよう」という動きが一山あったと思うんですね。会社対社員の権利、みたいな。

僕の活動はちょっと違っていて、「離れる」ことは人生にとって良いことだ、と言いたいんです。小山さんのように、キャリアブレイクの入口は体調不良だったとしても、離れてパワーアップする人がいるんですね。

離職期間も「キャリア」だ 

——私は以前、キャリアブレイクを「休む文化」だと考えていたんですが、実はそうではない、と。「離れる文化」だとおっしゃっています。

そうです。だから、すべての人にひらけているんですね。

何か明確にやりたいことがあったわけではないけれど、思い描いた未来にもっと近づくために「仕事から離れる時間が必要だ」と思って、会社を辞めた人もいます。バイクで旅をする中で「自分の心が動くこと」にフォーカスできるようになり、したい仕事が見つかった人もいました。

離職期間は一般的に「ブランク」と呼ばれ、無価値でなにもしていなかったとみなされてしまうことも多いですが、時には働いていた時よりも人生に大きな影響を与えることがあります。だからブランク、つまり「空白」ではなくて、「キャリア」なんです。会社に所属している期間だけが、キャリアではないのです。

そう考えると、キャリアブレイクを経験した人たちの社会的・経済的価値も大きいですよね。
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文・写真=小山美砂

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