音楽

2023.09.08

ジャンルの壁を飛び越え続けるピアニスト、角野隼斗の原点

角野隼斗

クラシック音楽で培った確かな土台のうえに、ジャズやポップス、ロックなどの要素を取り入れた“変幻自在のピアノ”で人々を魅了し続けるピアニスト、角野隼斗。

 “Cateen (かてぃん)“名義で活動を行なうYouTubeチャンネルは、登録者数125万人超えと人気を集め続けている。8月には、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30 JAPAN」の受賞者に選出された。

持ち前の超絶技巧と明晰さを駆使した角野の演奏は、圧倒的でありながらもどこかユーモラスで、聴く人に敷居の高さを感じさせない。その唯一無二の演奏表現は、多くの人を虜にしてきた。

遡ると彼は、東京大学大学院で機械学習を用いた自動採譜や自動編曲を研究する研究者でもあった。なぜ研究者の道ではなく、ピアニストという職業を選んだのか。その決断の背景や、今の活動について聞いた。


──ピアノとの出会いは?

母がピアノの先生だったので、ピアノは赤ちゃんのころから触っていたようです。

ピアノの他にも、1〜2歳の頃は「数字」を書くのが好きで、数字を見つけてはそれをなぞりにいくような子どもだったとか。パズルとか算数とかも、なぜか好きでしたね。

少し大きくなると、ピアノを人前で弾くことも好きになりました。幼少期は毎年コンクールに出ていて。本選、全国とステージが上がれば上がるほどホールやピアノが良くなるので、大舞台で弾くことを目標にしながら取り組んでいた記憶があります。

ただ、自ら進んで練習をする子どもではなかったですね。テクニック的には弾けるようになっても、それ以上音楽的に何をしたらいいかわからなかったというか。弾くのは楽しいけれど、何をすればいいかわからないから練習が嫌い、みたいな感じでした。

──あまり練習をしたくないときに親の目を盗んでゲームをしたり、遊んだりといったことも?

それはもう、当時友だちの間でも流行っていた「ニンテンドーDS」がやりたくて。母親とはよく、隠し隠され合いの攻防を繰り広げていました(笑)。

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」も6年目。2023年はパワーアップし、120人を選出した。彼ら、彼女たちが自らの言葉で、過去と今、そして未来を語る。
【30 UNDER 30 特集号が現在発売中 / 受賞者一覧を特設サイトにて公開中


次ページ > ピアニストになることは想像もしていなかった

文=門岡明弥 編集=田中友梨 撮影=山田大輔

タグ:

連載

30 UNDER 30 2023

ForbesBrandVoice

人気記事