バイトダンスの狙いは?
これらのアプリがTikTokに統合されるかは不明だが、バイトダンスは今年初め「Tako」という名称のAIチャットボットを同アプリに統合するテストを実施している。バイトダンスは、他にも多くのアプリをテストリリースし、ユーザーが定着しないものは廃止してきた。同社は、米国でTikTokをリリースする前にトリビアアプリや、おもしろGIFアプリ、ニュースアプリをリリースしたが、後にサービスを終了している。同社が世界中で提供するサービスは変化し続けており、現在はアフリカでWhatsAppの競合アプリ、東南アジアでスポティファイの競合アプリを提供している。ブラジルではツイッターの競合アプリを提供していたが、最近廃止している。
これら4つの生成AIアプリは海外市場を対象にしているが、バイトダンスは中国国内向けにもAIチャットボットアプリ「Dou Bao」をはじめとするAIアプリを提供している。Dou Baoは、中国政府の承認を得た後、8月にリリースされた。中国では、ボットが社会主義の核心的価値観を遵守することが求められるが、このことは政府の検閲ガイドラインに従うことを意味する。
中国によるデータ収集の危険
ボットに対する需要の急増やTikTokの成功を考えれば、バイトダンスが欧米でも生成AIアプリをリリースすることは驚くに値しない。しかし、欧米の規制当局は、中国政府が同社の従業員に圧力をかけて欧米人の個人情報を収集したり、親中国的なメッセージを配信することを懸念しており、バイトダンスの動向に監視の目を強めることが予想される。人々は、ボットに機密性の高い個人情報を提供することが多く、ボットは貴重なデータ源となっている。また、ボットはその思考プロセスが人間にはわからないため、隠密な影響工作に適していると言える。4つのアプリのプライバシーポリシーには、バイトダンスの他のアプリと同じく「バイトダンスのグループ企業にユーザー情報を共有する可能性がある」という文言が含まれている。同社の広報担当者であるセスに確認したところ、これらのアプリのユーザーデータは、同社のアクセス制御と承認プロセスに基づき、中国にいる同社社員がアクセスする可能性があるいう。
CozeとChitchopをテストしたところ、1989年に起きた天安門事件など、中国政府の検閲対象となる話題について実用的な説明をしたが、いずれもイデオロギーとは無関係なハルシネーション(幻覚)が見られた。BagelBellはフィクションの物語を作るため、歴史に関する知識をテストすることはしなかった。しかし、習近平がくまのプーさんと花畑で戯れるという物語を作るという依頼には応えた。
フォーブスがDouBaoとデザインが酷似しているCiciをテストするためにアカウントを作ろうとしたところ、何度もエラーになったため、アプリを使うことはできなかった。
規制当局は、中国政府がAIを使って外国企業から知的財産を盗むことも懸念している。12月にThe Vergeは、バイトダンスがOpenAIの利用規約に違反し、同社の大規模言語モデルを用いて独自のモデルを開発していたと報じた。これを受けて、OpenAIはバイトダンスによるAPIへのアクセスを停止した。
バイトダンスの広報担当であるセスによると、同社はマイクロソフトAzureのライセンスを通じてOpenAIを使用しており、GPTにアクセスできるという。OpenAIにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。
(forbes.com 原文)