WOMEN

2024.02.13 14:30

「パナソニックでいいの? と聞かれたけれど」女性発イノベーションの旗手・松岡陽子が日本企業を選んだ理由

Forbes JAPAN編集部

「あの会社でいいの?」

その松岡が19年、日本のパナソニック(現パナソニック ホールディングス、以下HD)に入社する。

誰もが驚き、なかには「あの会社でいいの?」と聞いてくる者もいた。だが本人は「テクノロジーで暮らしを良くするという私自身のミッション実現に最も近い場所。ほかのグローバル企業からも誘いはあったけれど、パナソニックだから選んだ」と話す。「日本の大企業の社内政治は汚いよ」とささやく声も、こう笑い飛ばした。

「私はアメリカの会社でも、本当に汚い部分を見てきています。大企業の経営層もくだらないことで喧嘩をするし、権力闘争も激しい。世界中どこでも一緒ですよ」

入社前からパナソニック社員と対話を重ねてきた松岡。家電で人々の暮らしを良くしてきた創業者・松下幸之助のフィロソフィーが、今も社内に根づくことに感激したという。

現在は、HD100%出資の次世代コンシェルジュサービス「Yohana」 CEOとして、忙しい家族の暮らしを手助けする。アプリで日常のTo-doを依頼すると、専門のスタッフが解決する仕組みだ。サービスは全米で展開、日本では首都圏を中心に順次エリア拡大を目指す。

「これまでのイノベーションは主に男性が起こしてきたので、女性が抱える問題は解決できていません。特に家事や育児は、女性が無報酬で担ってきたので、経済的なビジネスモデルを考えにくいのでしょう」

しかし、日本でもコロナ禍でオンラインショッピングが浸透し、家事のアウトソーシングを肯定的にとらえるマインドセットが生まれ、Yohanaのようなサービスの需要はますます高まっている。HDの執行役員でもある松岡は、23年7月に発足した「PanasonicWELL本部」の本部長となり、AIやロボティクスを活用しながらウェルネス領域のビジネス推進を担う。

「ハードウェアとソフトウェアを接続しながら暮らしをサポートするエコシステムをつくっていきたい。暮らしを助けるテクノロジーはまだまだ足りていないのです」

Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2023」審査員の推薦コメント

高野 真(Forbes JAPANファウンダー、日本ベンチャーキャピタル協会 専務理事)

▷世界的な視点で育てられた人が、日本でその能力を発揮できるポジションに。このことは日本の企業社会全体にポジティブな変化を与えるはず。



まつおか・ようこ◎1972年、 東京都生まれ。米ハーバー ド大学博士研究員などを経 て、天才賞と呼ばれるマッカーサー賞を受賞。Google X共同創業者、Apple副社長、Google副社長などを歴任。2019年にパナソニックに入社し、20年Yohana設立。

文=督あかり

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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