WOMEN

2024.01.12 14:00

リーダーは「登用」するのではなく「育てる」もの。大東建託で女性が活躍できるようになった理由

ダイバーシティ推進部部長 湯目由佳理(左から2人目)、後方左から同部課長 新関晶久、富士本優、井上和哉

ダイバーシティ推進部部長 湯目由佳理(左から2人目)、後方左から同部課長 新関晶久、富士本優、井上和哉

女性社員の活躍を期待する「受け身」の姿勢から、活躍しそうな女性を見いだして育てることで、社内の女性リーダーを増やそうという「育成型」へ。

考え方の転換により着実に成果を挙げ、Forebs JAPAN「WOMEN AWARD 2023」ではポジティブアクション賞を受賞。同社の取り組みを紹介しよう。


大手ハウスメーカーの大東建託は、徹底した実力主義で知られる。そんな社風のなか、多くの女性社員は「管理職にはなりたくないし、なれない」と思い込んでいた。そこで同社は、女性リーダー候補を発掘して育成し、管理職に引き上げるという独自の女性育成プログラムを始動させた。

「資質があるのにあきらめてしまう社員を、うまく引き上げる。そこに注力しています」(ダイバーシティ推進部部長・湯目由佳理)

これまで、女性の上級管理職への昇格は数年で1人。そこで「女性管理職を増やす」を目標に据え、建設業界初のクオータ制の導入などさまざまな施策を実施した。このプログラムが功を奏し、2年間で女性上級管理職4人を輩出した。

一貫して取り組むのが、女性社員の声をヒアリングし、施策に反映させること。彼女たちが「自分は能力がない」「自信がない」と口にするのは、管理職に対する“イメージ”と関係しているとわかった。

「先頭に立って部下に指示を出すタフな管理職を見てきたために、自分はそういう管理職にはなれないというのが30代の女性社員の本音でした」(湯目)。

「実力のある女性を登用する」から「資質のある女性社員を育てる」に方向転換したのも、そうした声に押されたからだ。管理職のキャリアをためらう人が多いなか、資質のある女性社員を見いだし、管理職へと育てる「育成型」に舵を切った。

2021年10月に始動したこの大規模な改革には、強みとなる柱がある。それが、独自の研修プログラムだ。

ひとつは、女性社員の過小評価など無意識のバイアスを払拭することに重点を置いた「女性教育プログラム」。そして、上司となる管理職を対象とした、女性社員の気持ちや的確な声かけなどを学ぶ「意識改革研修」。例えば、昇格をためらう女性社員に対して「やる気がない」と決めつけない、といったことを学ぶ。

こうしたプログラムを通して、女性社員に自信をもたせるだけでなく、管理職側も、社員の考えを理解した上でリーダー職への後押しができるようになるという。1回目の実施を終える2024年4月には、女性管理職比率6%を達成する見通しだ。

女性活躍が着実に進む大東建託。 それは建築の現場にも。同社のYouTubeチャンネルでは、女性現場監督の密着動画を楽しい構成で紹介。はつらつとした働きぶりからは責任感とやりがいを感じる。

女性活躍が着実に進む大東建託。「現場監督」と呼ばれる施工管理職に従事する女性が安心して長く働けるよう「女性施工管理職向け職種転換制度」を新設。同社のYouTubeチャンネルでは、女性現場監督の密着動画も公開している。


大東建託の女性社員の割合は、23年4月1日時点で全体の15.8%。営業職、技術職では、各拠点に女性社員や女性管理職がたった一人ということも。こうした環境で女性が孤立しないよう、悩みなどを話し合うオンラインコミュニティもスタートさせた。縦横に女性社員同士を結び、働きやすい環境づくりに注力する。

「課長止まりで、次長や部長がまだ少ないのが課題です。女性社員の採用率も22.4%と少ないので、採用を増やすために取り組みを強化していきたい」


大東建託◎1974年創業。賃貸経営の提案、賃貸住宅の建設請負、仲介、管理、家賃保証など一気通貫のサービスが強み。業界の古い体質からの脱却を目指し、2015年、人事部内にダイバーシティ推進課(現在はダイバーシティ推進部として独立)を設置。女性育成プログラムをはじめ、さまざま取り組みを実施してきた。

文=中沢弘子 撮影=若原瑞昌

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