【ダボス現地リポート(2)】AIは世界の不平等を解消し、信頼できる存在になるのか

1月15日に開幕した世界経済フォーラム年次総会2024(通称「ダボス会議」)。「信頼の再構築へ」をテーマに2800人を超えるリーダーが集い、主に「分断された世界における安全保障と協力の達成」「新時代の成長と雇用の創出」「経済と社会の原動力としてのAI」「気候、自然、エネルギーの長期戦略」の4つのテーマの進展に向けた議論が続く。

ダボス現地リポート(2)では16日に行われた2つのセッションを通じて、AIが持つ可能性と、世界が協力して解くべきAIの課題を紐解いていく。

マイナス10度以下に冷え込んだ早朝のダボス。8時15分にスタートしたセッション「生成AI:第4次産業革命の蒸気機関?」(Generative AI: Steam Engine of the Fourth Industrial Revolution?)にはIBMのCEO、アクセンチュアCEO、クアルコムCEO、アラブ首長国連邦(UAE)AI・デジタル経済・リモートワーク応用担当国務大臣、米国上院議員という錚々たるメンバーが揃い、生成AIが世界の産業に与える影響や、生成AIに潜むリスクをどう管理すべきかについて議論した。

生成AIがもたらす機会とリスクについて、米国上院議員のマイク・ラウンズは「AIは戦争のあり方に影響を与えるだろう」と指摘。軍隊や軍備にAIを導入する国は他国を圧倒するだろうと、セッション冒頭から重い議題を投げかけた。

それに対し、UAEのAI・デジタル経済・リモートワーク応用担当国務大臣オマール・スルタン・アル・オラマは「気候変動とAIは(世界規模の問題であり、放っておけば大惨事につながるという点で)非常に似た課題を抱えている」と話し、UAEでは気候変動対策や交通量の最小化などにAIを導入しつつも、他国と協力しながらテクノロジーがもたらす悪影響に対処する姿勢を示した。

産業界トップたちの考えはどうか。アルコムCEOのクリスティアーノ・アモンは「この1年で生成AIを用いた何千ものアイデアを目にするようになった」「(生成AIが急速に発展する今は)イノベーションとテクノロジー・リーダーシップの格好の機会だ」と指摘。アクセンチュアCEOのジュリー・スウィートは「政府であれ企業であれ、成功するかどうかの最大の分かれ目はリーダーシップであり、本当にテクノロジーを理解しているかどうかだ」と話し、テクノロジーへの正しい理解がよりよい選択と運用につながるとした。

生成AIの活用については多くの懸念点があるのは事実だ。しかし必要以上に規制をかければ、新たな技術がもたらす可能性を阻害する恐れがある。IBM CEOのアービンド・クリシュナはテクノロジーそのものを規制することの難しさに言及しつつ、生成AIについてはユースケース単位で考えることが重要だとし、イノベーションを阻害しない規制のあり方を提案した。
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文/瀬戸久美子 写真/世界経済フォーラム

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