AIは世界の格差解消に貢献できるのか
年次総会2日目の午後はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領や中国の李強首相、ジェイク・サリバン米国国家安全保障担当大統領補佐官など、政治家のトップや政府高官のスピーチが目白押しだった。そんななか、事前予約で即満席になったセッションが「AI:偉大なる平等主義者?」(AI: The Great Equaliser?)である。登壇者はサウジアラビア通信・情報技術大臣のアブドラ・アル・スワハ、国連事務総長技術特使のアマンディープ・シン・ギル、韓国首相の韓悳洙(ハン・ドクス)、ルワンダ情報通信技術革新相のポーラ・インガビレ、アルファベット社長兼最高投資責任者(CIO)のルース・ポラット。多彩なリーダー5人がAIへの平等なアクセスを確保するために必要なことを議論した。
セッション冒頭、韓国首相の韓は「AIはいくつかの注意点を除けば偉大な平等化の装置になり得る」と発言。ヘルスケアや電子商取引、気候変動など目的に合わせてAIモデルを微調整し、国内外の人々のニーズに適応できるようにしたいとの考えを示し、「デジタル化において、韓国は頂点に立つ国のひとつだ」と話した。
一方、デジタル変革エコシステム強化のために世界銀行グループから1億ドルの支援を受けたルワンダ。同国の情報通信技術革新相インガビレは、AIを農業や医療の分野で活用することで大きな経済効果を得られるとし、「(デジタル化の)ギャップを縮めるのを待つのではなく、(ギャップの縮小とテクノロジーの導入を)同時進行するところにチャンスがある」と説明。アルファベットのポラットも、AIが貢献できる分野として医療や食糧、気候変動などを挙げ、AIの活用はあらゆる業界や国のリーダーにとって重要だと指摘した。
AIが生み出す経済効果に大きな期待を寄せるのは中東のサウジアラビアも同じだ。同国の通信・情報技術大臣スワハは医薬品開発の例を挙げながら、AIから恩恵を享受するにはAI世代のリーダーシップと業界を超えたパートナーシップなどが不可欠だと強調した。
一方、SDGsの観点から否定的な見解を示したのが国連事務総長技術特使のギル。現状のままでは「AIがSDGsを救うことはないだろう」としたうえで、AIがもたらすリスクへの対処や適切なデータ活用、AI倫理や人的資本などさまざまな分野に投資を拡大する必要があると説いた。
世界経済フォーラムが1月15日に発表した「チーフエコノミスト・アウトルック」では、今後5年間で高所得国では生成AIによる生産性向上効果が経済的に大きくなると予想したチーフエコノミストは全体の94%にのぼった。一方、低所得国で同様の効果が見られると予測したチーフエコノミストの割合は53%に留まる。
AIは世界の不平等を解消し、誰もが信頼できる存在になり得るのか。そして、AIへの平等なアクセスを確保するために貢献できることは何か。
「AIは偉大なる平等主義者になるか」。あなたなら、この問いにどう答えるだろうか。