経済

2024.01.15

【ダボス現地リポート(1)】「信頼の再構築」でパーマクライシスを回避できるのか

写真提供/世界経済フォーラム

世界経済フォーラムの第54回年次総会(通称「ダボス会議」)が2024年1月15日に始まった。
 
今年のメーンテーマは「信頼の再構築」(Rebuilding Trust)。スイス・ダボスで開かれる総会には世界各国の政府・国際機関の公人やパートナー企業の経営者、イノベーター、専門家などが集結し、対話を通じて複雑化するグローバルな課題への解を検討する。
 
果たして、24年は不安定な状況が続く「パーマクライシス」の時代となるのか。それとも協調と連携の姿を見出し課題解決へと向かうのか。
 
「ダボス現地リポート」では、メディア・リーダーとしてダボス会議に参加している筆者が現地からセッションの様子やリーダーたちの声を発信していく。第1回目は、23年11月に日本代表代行に着任した世界経済フォーラムの本田希里子に年次総会の意義と今後の展望を聞いた。

ほんだ・きりこ◎アビームコンサルティング、みずほ証券/みずほフィナンシャルグループ、ドイツ証券などを経て、2014年から世界経済フォーラム勤務。現在は日本代表代行として日本の地域戦略をリードするとともに、日本のステークホルダーのエンゲージメントを担当。早稲田大学大学院商学研究科卒。WHUコブレンツ経営大学院(ドイツ)、パリ政治学院DEA(国際関係学修士)。

ほんだ・きりこ◎アビームコンサルティング、みずほ証券/みずほフィナンシャルグループ、ドイツ証券などを経て、2014年から世界経済フォーラム勤務。現在は日本代表代行として日本の地域戦略をリードするとともに、日本のステークホルダーのエンゲージメントを担当。早稲田大学大学院商学研究科卒。WHUコブレンツ経営大学院(ドイツ)、パリ政治学院DEA(国際関係学修士)。 

──今回のダボス会議のテーマは「信頼の再構築」です。経済の観点から、信頼を再構築する必要性をどう捉えていますか。
 
経済は世界秩序の重要な構成要素だ。特に日本経済は自国だけで成り立っているわけではない。世界とつながりながら経済成長を成し遂げるための鍵はコラボレーション、コーポレーション、パートナーシップにある。これらのベースになるのが信頼(トラスト)だ。世界経済フォーラムの年次総会は今年で54回目になるが、各界の要人たちにダボスに集まっていただくのは、まさにトラストをリードするためでもある。
 
──信頼の再構築はダボス会議の基本に立ち返るテーマでもあるのですね。
 
グローバルサウスなど様々な国が力を持ち始め、第四次産業革命によって個人の力も大きくなるなか、共通の価値観をベースに国際的なシステムや経済モデルを考えるのは難しいと皆が感じ始めている。価値観は多様であっていい。だが、気候変動やエネルギー転換の問題は皆で乗り越えなくてはならない世界共通の課題だ。
 
信頼の再構築というテーマの背景には、価値観が多様化するなかでもトラストを再確認・再定義し、皆で経済成長や気候変動、食糧の安全保障などグローバル規模の課題について考え直そうという意図がある。そしてトラストを再構築することが、新たな機会の創出や経済成長の追求につながる。
 
──とはいえ気候変動など世界共通の課題に対して「フェイクだ」「陰謀だ」などと考える人たちもいて、ファクトを共有することすら難しくなっていると感じます。
 
だからこそ多様な価値観を持つ人たちがダボスに集い、対話することが大事なのだ。対面し、相手の表情や言葉の使い方、振る舞いなどから本心や本音を掴んでいく。時間はかかるかもしれないが、会って、目を見て話すところから信頼は生まれる。
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文=瀬戸久美子 写真=世界経済フォーラム

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