国内

2024.01.21 13:30

次代を担う新星たち。今注目の日本発スタートアップ6社

英認証機関も導入、「AI品質管理」の世界標準へ


小林裕宜|Citadel AI

生成AIや大規模言語モデル(LLM)の普及が進む今いま、プライバシーの保護や偽情報対策といった「AI規制」が国内外で議論されている。こうしたなか企業が開発するAIの品質管理を事業として展開するのが、Citadel AIだ。
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提供するサービスは、開発時のAIのバイアスや弱点を耐性テストする「Ci tadel Lens」、運用中のAIの異常な入出力を検出する「Citadel Radar」、生成AIのハルシネーションを防御する「LangCheck」の3つ。人手では難しいAIの品質検証を自動で行い、人間の作業時間を95%減らす。CEOの小林裕宜は「そもそもAIというのは人間では記憶しきれないデータを学習するもの。それを人間が管理しようというのは無理がある」と話す。

強みは、世界中から集まった優秀なエンジニアチームだ。米アルファベット傘下のAI中枢研究開発機関であるグーグル・ブレインでAIインフラ構築責任者を務めたケニー・ソンを筆頭に、自動運転技術を開発するウェイモ、米ペイパルの子会社となった日本発決済サービスPaidy、トヨタなどでAIエンジニアとして経験を積んだ人材が11人在籍する(社員は14人)。小林は「AIモデルをつくるハードルは下がっているが、モデル検査をする専門医は少ない。弊社にはそれを世界レベルでやってきた希少人材が集まっている」と語る。

サービスは、国際的な規格開発や認証を行うBSI(英国規格協会)が導入。BSIがAIの技術規格適合を判断する際にCitadel AIの知見を活用する。欧州では早ければ2024年にも「AI法」の施行が見込まれるなか、同社が企業のAI開発の世界標準になるかもしれない。
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こばやし・ひろのり◎東京大学卒業後、三菱商事、ロイヤリティ マーケティング(Ponta 運営)社長、米国駐在などを経て、2020年にCitadel AIを共同創業。

物流の「2024年問題」に挑むDXプラットフォーマー


野呂寛之|X Mile

2024年4月からトラック運転手の年間時間外労働の上限が960時間に制限される。長時間労働の慢性化を解消することにつながる一方で、24年の輸送能力は19年比で最大14.2%(約4億トン)に制限されると試算されている。事業者はこれまでの輸送を継続できるよう、ドライバーの確保などに追われているのだ。物流業界で「2024年問題」といわれるこうした課題に挑むのが、X Mileの野呂寛之である。

同社が主軸として展開するのが運送業界に特化した業務効率化SaaS・経営支援プラットフォーム「ロジポケ」とHRプラットフォーム「X Work(クロスワーク)」。ロジポケは請求書や受発注の管理、監査対策、運送手配などをクラウド上で行うことができ、クロスワークはドライバーや倉庫作業員、自動車整備士といったノンデスクワーカーの採用に課題を抱える事業者に向けた成果報酬型のサービスだ。同社CEOの野呂寛之は「トラックの配車管理SaaSのような、単一の機能をもつサービスはすでにある。一方でX Mi leはひとつのプラットフォームで複合的なプロダクトを提供できるのが他社との差別化要素になっている」と話す。2つの事業はすでに30万人以上のユーザーを抱え、およそ1万事業所が導入している。今後はトラック1台あたりの温室効果温暖化ガスの排出量を管理できる機能の開発などにも取り組む予定だ。

さらにX Mi leでは、ドライバーの待遇改善に向けた企業への働きかけも行う。例えば昇給交渉の代行や、応募者を増やすための給与基準を提示するといったことだ。「中長期的な取り組みではあるが、採用候補者が集まる環境づくりにも貢献したい」。従業員数はこの1年で2.5倍となる200人規模に増員した。課題解決に向け、組織基盤の構築も着実に進む。

のろ・ひろゆき◎2016年にテラモーターズベトナム支社に駐在し、製造拠点・物流網の構築、販路拡大に従事。FinTechスタートアップPaymeにて創業期にCOOに就任。19年にX Mileを創業した。
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text by Hiromi Kihara(Toregem Biopharma), Ryoya Sonoda(Free Standard), Aya Ajimi(Citadel AI,kaeka), Ryoya Sonoda(X Mile), Risako Mita(LinQ), photographs by Jan Buus, illustration by Sebastien Plassard

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