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2024.01.12 08:00

日本にも進出の中国飲料チェーン「MIXUE」を生んだビリオネア兄弟

遠藤宗生

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張紅超(チャン・ホンチャオ)は21歳のとき、祖母に借金をして中国中部の鄭州市でかき氷を売る小さな店を開いた。1号店は失敗に終わったが、その2年後、店の名前を「ミーシュー(MIXUE、蜜雪冰城)」に改め、再びかき氷の移動販売に挑戦した。やがて、アイスクリームをメニューに加え、後にバブルティー(タピオカミルクティー)やレモネード、コーヒー飲料を激安で売ることで事業を軌道に乗せることに成功した。

蜜雪冰城は今や、約3万6000店舗を展開する中国最大のティードリンクチェーンとなった。47歳の張は、弟で39歳の張紅甫(チャン・ホンフー)とともに、保有資産が10億ドル(約1460億円)を超える「ビリオネア」となっている。

蜜雪冰城は1月2日、香港市場に上場を申請。申請書類からは、兄弟の持分がそれぞれ42.8%であることが明らかになった。同社の2023年1~9月期の売上高は前年同期比46%増の約154億元(約3200億円)、純利益は同51%増の約24億5000万元(約500億円)だった。同社の評価額は、保守的に見積もっても29億ドルはあると見られ、張兄弟の資産はそれぞれ12億ドルと推定される。

蜜雪冰城が最後に資金調達を行ったのは、ベンチャーキャピタル(VC)投資が活況だった2021年1月で、ビリオネアの張磊(チャン・レイ)が設立した高瓴資本(Hillhouse Capital)や、同じくビリオネアの王興(ワン・シン)が率いる美団のVC部門、龍珠資本(Dragonball Capital)などから、評価額33億ドルで3億2900万ドルを調達。2022年には深圳市場に上場申請をし、9億1500万ドルを調達しようとしたが、実現には至らなかった。

蜜雪冰城が展開する3万6000店のうち、中国国内にある3万2000店の大半はフランチャイズ店だ。残りの4000店は、アジアを中心に日本を含む11カ国で展開している。中国コンサル大手の灼識諮詢(CIC)によると、蜜雪冰城は2023年の1~9月に全世界で約58億杯のドリンクを販売し、作り立て飲料の販売杯数で世界2位(1位はスターバックス)となっている。

競争が熾烈なバブルティー市場において、蜜雪冰城は低価格戦略によって存在感を増しており、中国の格安Eコマースプラットフォーム「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」にちなんで「バブルティー業界の拼多多」とも呼ばれている。作りたてのレモネードやソフトクリーム、フルーツティー、コーヒーも販売しており、価格は1杯当たり3~10元(約60~200円)に設定している。これに対し、香港市場に上場する競合の「奈雪の茶(Nayuki)」の1杯当たりの平均価格は27元(約550円)となっている。
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編集=上田裕資

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