宇宙

2023.12.18 12:30

「微生物ダークマター」研究から生命の謎に迫る宇宙生物学者

アゾレス諸島の洞窟は地下に生息する生物の宝庫

宇宙生物学者らは、アゾレス諸島の火山の洞窟網とその地下の生物生息環境に興味をかき立てられている。月や火星で行われる将来の探査ミッションで、地表下の微化石をどのように探すかということの手がかりが得られるからだ。

火星の洞窟は、地球よりも長い時間の尺度で存続している可能性が高い。

火星の洞窟は、地球上の洞窟に比べて、地質学的にも水文学的にもずっと平穏な環境にあるため、はるかに大昔から残っていると、米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究センターの地球微生物学者で宇宙生物学者のペネロペ・ボストンは、筆者の取材に応じた電子メールで説明してくれた。ボストンによると、地球では、動的な浸食や沈み込みなどの作用が原因で、火星に匹敵するほど長期間持続できる地質学的特徴はほとんどないという。

火星上で露出しているのが確認できる溶岩洞や溶岩口に加えて、現在は開口部のない空洞があることは間違いなく、その中に古代の生命存在指標や重要な気候史データが保存されている可能性があると、ボストンは指摘する。

火星で十分に古い洞窟を発見できれば、微化石が見つかる可能性があるのだろうか。

ボストンによれば、ゆくゆくは火星の地下環境でそのような痕跡が見つかったとしても、それがかつて生物だったかどうかを判断するには、膨大な分析が必要になる。これは地球上の非常に古い生命の痕跡の可能性のある化石にも当てはまることで、ただ見ただけで「見つけたぞ!」と叫ぶことはできないと、ボストンは述べている。

アゾレス諸島のテルセイラ島にある地下の溶岩洞窟内に立つ筆者(Bruce Dorminey)

アゾレス諸島のテルセイラ島にある地下の溶岩洞窟内に立つ筆者(Bruce Dorminey)

NASAが火星の洞窟探査を開始するのは、いつになるのだろうか。

ボストンによると、洞窟を含む探査困難な地形をロボットで調査する方法を開発するための取り組みが、NASA内外のさまざまな研究グループで進められているという。もし、すべてがNASAの現在の月探査計画通りに進めば、NASA有人月面探査計画「アルテミス」で、今後20年以内に、高度なロボットによる洞窟の探査方法を開発するための技術的なテストベッドが提供されるのではないだろうかと、ボストンは言う。

火星で生命を見つけるのは一目瞭然とはいかない

当初の洞窟調査では、パッと目に飛び込んでくるものを重点的に調べていた。しかし、それほど目立たないものに目を向ける必要があると、ノーサップは言う。なぜなら、もし火星で生命が見つかるとすれば、それは微生物マット(微生物がマット状に増殖した状態)のような明白なものではないはずだからと、ノーサップは語る。


forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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