ラグビー代表アナリストが分析!「リーグワン」の見どころとW杯8強への課題

リーグワンで注目すべき日本代表選手たちのポイント

さて、そろそろ話をリーグワンで注目すべき日本代表選手たちに戻しましょう。W杯で出場機会を得られなかった選手や役割的にボールを持つ機会が少なかった選手もいますが、彼らはリーグワンで活躍してきたからこそ日本代表に選ばれた、実力ある選手たちです。

例えば、キヤノンイーグルスのシオネ・ハラシリ選手や東京サントリーサンゴリアスの垣永真之介選手、堀越康介選手はリーグワンでのパフォーマンスが凄く良いので、ぜひ彼らのプレーにも注目してほしいと思います。

注目すべき選手を強いて一人挙げるとすれば、東芝ブレイブルーパス東京のリーチ・マイケル選手です。日本代表では6番(フランカー)でプレーすることが多く、ブレイブルーパスでも6番でプレーすることがありましたが、開幕戦ではナンバーエイトで出場しています。8番でプレーすることで、より多くボールを前に運ぶ役割をチームから求められると思うので、彼のよりダイナミックなプレーが見られることでしょう。
リーチ・マイケル選手(Photo by Toru Hanai/Getty Images)

リーチ・マイケル選手(Photo by Toru Hanai/Getty Images)


リーチ選手のように、代表チームで戦ってる時とは異なるポジションや役割で出場する選手たちに着目するのも面白いと思います。

例えばコベルコ神戸スティーラーズの李承信選手も、リーグワン開幕戦では12番(センター)で出場していますが、普段は10番(スタンドオフ)の選手です。今シーズンどんなプレーを見せてくれるのか、興味深いところです。

また、エディー・ジョーンズ氏がヘッドコーチに復帰し、代表チームの戦術も今後変わっていくことが予想されますので、そういった点からも代表チームでとは異なるポジションや役割を担う日本代表選手たちのプレーは、一つの見どころではないかと思います。

代表強化の視点でリーグワンに期待すること

先ほど述べた日本代表の課題である「キックやモールの向上」は、リーグを通した代表強化においても避けられないポイントです。

一方で、各チームともフィジカルの能力の違いや、キーとなる選手の有無、戦術的にできること・できないことがある中で、一番の強化策は各チームが「それぞれの色を出していくこと」ではないかと考えています。

ボールの運び方でもキックの活用でも、みんながみんな同じようなラグビーをしていても、全体として戦術的な発展は望めません。ディビジョン1であれば12チームがそれぞれの特徴を活かしたラグビーをすることによって、お互いの良いところを取り込みながら、リーグワンがレベルアップすることを期待しています。

データを活用した試合観戦のすゝめ

そして、皆さんにはぜひスタッツを見ながら、試合を楽しんでいただきたいです!

最近は公式サイトなどでスタッツ情報が得られるようになってきていますから、例えば解説者が「このチームはキックを多用する戦術」と話している時に、どちらのチームがどれだけ多く蹴っているか?とデータを見てみたり、スタッツをもとに予想を立てながらプレーを見ていくと、きっと数字の面白さを感じていただけることと思います。

また、大会サイドから、試合前にアプリやWebサイトで、データに基づくチームの特徴や試合の展開予想、注目すべきポイントがよりわかりやすい形で出されるようになれば、皆さんに気軽に、そして一層深く楽しんでいただけるのではないでしょうか。

個人のスタッツもリアルタイムで届くようになれば、選手交代ひとつとっても「まだいけるんじゃないか」「えっ、もう替えちゃうの?こんなに活躍してるのに?」といったように、観戦の楽しみが増すのではないかと思います。

ファンの方同士が観客席や試合後の酒場でビールでも飲みながら、そうした会話を楽しみ、ラグビーがますます盛り上がっていってくれたら、と願っています。
(c) JRFU

(c) JRFU

浜野俊平◎高校時代にラグビーを始め、上智大学在学中はラグビー部で選手として活躍するほか、アナリスト業務も手掛けるようになり、男子7人制ラグビー日本代表チームでアナリストインターンを務め、2015年リオ五輪で日本初の決勝トーナメント出場に貢献。2016年9月からラグビー日本代表(15人制)のアナリストを務め、ワールドカップ2019日本大会、2023フランス大会と2大会連続で分析スタッフとしてチームを支えた。


連載:スポーツアナリティクスの世界

編集=宇藤智子

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