ラグビー代表アナリストが分析!「リーグワン」の見どころとW杯8強への課題

リーチ・マイケル選手(Photo by Pauline Ballet - World Rugby/World Rugby via Getty Images)

アナリティクスの最前線──プレーもリテラシーも変える基盤づくり

ここで少し、私たちアナリストがどのようにデータ分析やテクノロジーの活用を行なっているか、ご紹介したいと思います。
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近年日本代表のアナリティクスの現場では、英スポーツデータ提供会社のOptaから入手したデータや自分たちで入力・加工したデータを組み合わせ、様々な情報を得るための作業をしています。

前述のような、過去の試合や他国との比較、大会の平均、個人単位ではどうなのかといった分析や、「この試合のこのポジションの選手がこの時間帯にこのゾーンで蹴ったこのキック」を「他の国と比較しよう」といった細かな分析もすぐにできるように、Optaのデータをソースとし、どの試合でも常にほぼ同等の基準で見れるように整備して、欲しい情報を可視化したり、自分たち独自のKPIやデータの見せ方をつくっているのです。

その過程には、そもそも各々のデータの定義付けが曖昧という難点があるため、映像などを使いながら、各プレーの定義付けの成否について精査するといったこともしています。

生成AIで、伝え方を工夫

データを可視化して、伝えるための技術として、生成AIを活用することもあります。データのままのみを選手に渡すのではなく、ゲームプランであったり、その週に取り組むべきことの根拠となる資料を作成する際などで、チャット形式のAIを活用する機会が増えています。
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さらに最近では、画像生成AIで「侍が刀を抜いているシーン」や「二頭のライオンが向かい合って威嚇してるシーン」といった、チームミーティングで使いたい言葉のイメージを作成したりもしています。

また、データ分析の裏の関数や計算式においても、ChatGPTなどのツールを使うことで幅が広がり、データの見せ方も増えています。すると、次もまた色んなデータを取れるようにしよう、といった思考サイクルが生まれ、そこで改めてOptaのデータに戻ると、また違ったデータの組み合わせが浮かんだりします。

こうしたツールを使うことで、単純に作業が効率化できるだけでなく、より多くの新たなアイデアや工夫を生む好循環ができていると、この一年で凄く実感しています。

ドローンなども活用して、即時フィードバックを充実

ドローンも以前から活用しています。海外のトレーニング環境では良いアングルでの撮影が難しいことも多いため、ドローンで俯瞰した映像を撮影できるようにしています。今年は防水のドローンを導入したので雨でもばっちりです。

あわせてフランス現地で、モニター付きのゴルフカートも調達しました。データが入ったPC5台と20インチほどのディスプレイを用意し、ドローンやカメラで撮影した映像をライブで取り込んで、選手たち4、5人で映像を見ながらミーティングができる環境を作りました。
(c) JRFU

(c) JRFU


プレーしたその場で、コーチからレビューを受けたり、選手間でパスの出し手と受け手での認識の違いやポジションをまたいでのすり合わせなどができるのは、すごく効率的で効果的です。

そのままグラウンドに戻って、そのプレーを2、3本復習するといったことはもちろん、練習後に選手がGPSの数値を見て、足りなければそこからあと数本走るということや、データをより深く見てみたいという要望が出てきたりもしています。

テクノロジーを駆使した即時フィードバックが可能な環境を作ることによって、選手の行動やリテラシーが変わってくるのだと感じています。

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編集=宇藤智子

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