「彼は、自分の思いを率直に表現する人間で、自分の国を愛しているのです」
スターバックスの元CEOでウィズの投資家でもあるビリオネアのハワード・シュルツはそう語る。
「あれほど若くして成功を収めていても、骨の髄まで謙虚であるところが彼の大きな武器です」
誰もがラパポートの急激な出世に心を奪われているわけではない。ウィズの貪欲な人材採用(従業員を750人から大幅に増やそうとしている)と資金調達(9億ドル以上)は、10年代のテック業界の放漫経営を思い起こさせる。競合各社は、同じく先見の明のあるイスラエル人が率い、あの時代最大の失敗に終わった新興企業との類似点をウィズに見いだす。だが、ウィーワークのアダム・ニューマンが事業を立ち上げたとき、ラパポートのようにすでに大型のイグジットを成功させた経歴をもつエンジニアだったわけではない。
とはいえ、大きな賭けにはプレッシャーがつきものだ。一部の同業者は、ウィズの強気な成長戦術は行き過ぎだと考えている。ラパポートも、自分が今日の企業経営の知恵に逆らっていることはわかっている。しかし彼は、新興企業の墓場は、有望な技術をもちながらも市場参入で後れを取ってしまった企業であふれていると語る。クラウドセキュリティ競争の勝者は1000億ドル企業になるはずだ。だからこそ、他社が支出を控える間にも、ウィズは事業拡大のために資金を追加投入するのだ、と。
「このポジションのほうが、勝算は高くなります。安全なわけではありませんが」(ラパポート)
エリート部隊の出身者たち
ラパポートと3人の共同創業者たちは、兵役期間中に出会った。10代にして有していた技術的な才能のおかげで、全員が8200部隊というエリート情報部門に配属されていたのだ。数学と物理の力が突出していたラパポートは、まず、「タルピオット」という特別なリーダーシッププログラムで兵役に就いた。少数の士官候補生がイスラエル軍のあらゆる領域で訓練を積み、キャンパス内の兵舎で暮らしながら大学に通うというもので、ラパポートはそこでコスティカと出会った。ふたりは8200部隊でルトワックとレズニックとともに兵役を務めたが、その後、ラパポートはさらに小さく、秘密に包まれた81部隊という精鋭サイバー集団に移った。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルタントとして2年間を過ごすと、ルトワック、レズニックと共に、自分たちがいちばん詳しいセキュリティの分野で12年にアダロムを立ち上げた。