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2023.11.18

欧米要人のウェブ閲覧データ、海外スパイ組織が悪用の恐れ

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すべてのウェブサイトやアプリの閲覧データの管理には抜け穴が存在し、米国や欧州の政治的リーダーや軍人、裁判官らは、情報漏えいの危険にさらされている──。アイルランドの人権保護団体ICCLは、直近の2つのレポートでこう主張している。

ICCLは、欧州連合(EU)や米国の重要人物に関する「極めて機密性の高い」情報が、RTB(リアルタイム・ビディング)と呼ばれるオンライン広告のリアルタイム入札システムを通じて、外国の勢力の手に渡っていると指摘した。

ほぼすべてのウェブサイトやアプリで使用されているRTBシステムは、データブローカーと広告主の間で匿名化されたデータの共有を可能にするもので、ターゲティング広告の配信に用いられている。

しかしICCLは、このデータは多くの場合、きわめて詳細なもので、裁判官や軍人、テロ対策チームや国防関連で働く人々のデータを含んでいると指摘。そのため、悪意のある人物がデータから個人の秘密を入手して脅迫行為を行う可能性があると主張している。

グーグルやマイクロソフトなどのRTB企業は、EUや米国のデータをロシアや中国に送っており、そのデータが悪用される可能性があるという。

ICCLはまた、イスラエルに本社を置く企業が販売するPatternzと呼ばれる監視ツールの使用も発見した。このツールは、RTBを利用して50億人もの人々のプロファイリングを行ない、車両のドライブルートや、子供に関する情報を入手できるものだとされている。

RTBデータ共有のルールは、主に標準化団体「IAB TechLab」が策定しており、グーグルのAuthorized Buyersプロトコルが、米国では約10.5%、欧州では約21%を支配している。

ICCLは、グーグルとIAB TechLabに対し、今後のRTBブロードキャストのプロトコルを修正し、個人データを含まないようにすることを求めている。

一方、グーグルによれば、RTBが共有するのは粗い位置情報だけで、健康状態や人種、宗教、政治的信条に関するデータは含まないという。同社はまた、昨年初めにロシアでの広告配信を停止したと述べている。

「リアルタイム入札で共有するデータの種類については、業界で最も厳しい制限を設けている。当社のポリシーは、悪質な行為者が人々のプライバシーとセキュリティを侵害することを許さない」とグーグルの広報担当者は述べている。

筆者は、マイクロソフトにもコメントを求めている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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