欧州

2023.12.10 11:30

「米国は助けに来ないかも」 欧州は独力でロシアと戦えるのか

だが、欧州諸国はその準備ができていない。ロシアがウクライナで残虐な戦争を始めて22カ月目に入るというのに、NATOの大国はポーランドを除いて、集団的自衛のための動員を部分的にすら行っていない。

2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻したあと、ドイツの国防費は増えるどころか減った。英会計検査院は最近、英国の重要な国防プログラム向け予算が170億ポンド(約3兆1000億円)不足していると明らかにしている。

欧州での戦争拡大を防ぐ最も安価な方法は、ウクライナがロシアを打ち負かすのを助けることである。ただ、重ねて言えば、共和党が国内外の全体主義の脅威にきちんと向かい合わない限り、欧州はこの取り組みで米国を頼りにすることはできない。

欧州はウクライナを通じて間接に、あるいはウクライナが敗れた場合は直接に、ロシアと単独で戦えるように準備しなくてはならない。単独で戦うためには、米国が現在提供している軍事能力をすべて自前のものに切り替える必要がある。

「英国を含む欧州諸国は、ウクライナが戦い続けるのに必要な砲弾や予備部品、防空ミサイルの生産能力を大幅に引き上げるとともに、危険なほど減っている自国の在庫を補充するためにも、至急投資する必要がある」とブロンクは提言している。

さらに欧州の空軍は、ロシアの防空システムを制圧・破壊するという複雑で危険な任務に向けて訓練し、装備を整えることも求められる。

なぜなら「欧州でロシアの通常戦力を押し返すうえで頼りにできるのは、もっぱら航空優勢の達成になる。それなしでロシアを打ち負かすのに必要な規模と質の地上戦力、地上火力を配備する採用能力や資金を、欧州のNATO諸国は持ち合わせていない」(ブロンク)からだ。

欧州人とその指導者は、いまが歴史的な危機だということを理解しなくてはならない。戦争が欧州で起こり、アジアでも起こる可能性が高まってきている。ウクライナの国の存亡をかけたロシアに対する死闘を支援することで、戦争の拡大は防げるかもしれない。

戦争など起こらないとうそぶくのは、前もって降伏するも同然だ。ブロンクは論考の最後に、1936年、ドイツとの戦争は不可避と正しく認識していた英国の政治家ウィンストン・チャーチルが、議会で英軍の軍備増強を訴えた際の言葉を引用している。

「わが国の防備を整える時間はまだ残されておりましょうか。(中略)それとも、あの恐ろしい、『遅すぎた』という言葉で振り返られることになるのでありましょうか」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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