2022年5月に最初の顧客がサービスを開始して以来、インプリントのGAAP収益は2000万ドル(約28億円)に達したが、この数字には銀行パートナーやカードネットワークに支払う手数料も含まれている。マーフィーによれば、同社は黒字ではないものの、低コストを維持しており、2021年にクレイナーパーキンスが主導し、AffirmとStripeが参加した3800万ドル(約54億円)のシリーズAから得た資金の大半をまだ保有している。
2020年のパンデミック初期に設立されたインプリントは当初、美容ブランドのGlossier(グロッシアー)やスーツケースブランドのAway(アウェイ)のような消費者直販企業をターゲットにしていたが、製品と市場の適合性を見つけるのに苦労したという。その数カ月後に同社は、H-E-Bやウェストゲート・リゾーツなど、大手銀行のレーダーの下をくぐってきた地域ブランドに焦点を移し、本領を発揮した。
ホリデイ・イン・クラブ・バケーションズがインプリントを選んだ理由は、使い勝手がよく、適応性が高かったからだと、同社のソーニャ・ディクソンCFOはフォーブスの取材に語った。このホスピタリティブランドは、3カ月以内に新たなカードを発行することができたと付け加えた。
大手との熾烈な競争
ここ最近では大手銀行との対決にますます力を注ぐインプリントは、チャイナタウンの古びたビルの2階にあったオフィスを、ニューヨークの金融街の真新しいビルに移したという。「これまでの小さなスタートアップというステータスを抜け出し、大手企業らしく見せるためです」と、マーフィーはやや残念そうに話した。もちろん、大手銀行が簡単に市場をインプリントに明け渡すことはないだろう。大手銀行はより長い実績と規模を提供できるし、場合によってはインプリントの提携先ブランドの見込み顧客とすでに取引関係を築いている可能性もある。さらに、インプリントのようなスタートアップは、預金という形で安価な資金源を利用できる大手銀行と違い、よりコストが高い資金に依存している。
インプリントがその使命を果たせば、消費者は特定のブランドのカード会員でなくても、インプリントの提携ブランドからのオファーを利用できるようになるかもしれない、とマーフィーは言う。例えば、ある高級せっけんのブランドは、近くにいるインプリントのカード会員に、フラッシュセールを提供できるかもしれない、とマーフィーは述べた。
しかし、同社の中核ビジネスが、顧客のブランド名を表面に、インプリントのロゴを裏面に印刷したインプリントのカードであることに変わりはない。
「このスタートアップの成功は、そのようなカードを自慢できるものにできるかにかかっている」と、リビット・キャピタルの代表で彼らのシリーズBを率いたニック・ヒューバーは述べた。「彼らは、カードをデザインし、顧客がデートの支払いの時に、そのカードを自慢できるような、すばらしいブランドをパートナーに選ぼうとしている」と語った。
マーフィーは、この意見には同意しかねる様子で、クールであることよりもお得であることが大事だと話した。「私の会社が存在する理由は、消費者により良い特典を提供できるようにしたいからです」と彼は主張した。
(forbes.com 原文)