グローバルの成功企業は、営業マネージャーをどう育てているか
最後に「有能な営業マネージャーを組織的に育てる仕組みを作る」。グローバルの成功企業で営業マネージャーを育てることに成功している事例を3つご紹介します(出典:Sales Growth 2)。北米のある消費者サービス企業では、あらゆる営業改革プログラムやトレーニングに数年間投資してきましたが、改善効果は少なく苦戦していました。調査したところ、本当に重要なスキルは、見込み客の開拓から売り込みをかけるまでのアプローチ、自社の提案の仕方であることが分かり、そのスキルを構築する営業マネージャーの育成に力を入れたのです。その結果、営業マンの生産性は18か月後に全地域で25%改善しました。
この企業では営業マネージャー育成に力を入れると決めてからは、マネージャーが営業パーソンへのコーチングセッションが行っているかを見える化、失注案件の体系的な原因分析によりスキルが定着しているかの確認を週次で行いました。また、マネージャーをコーチングしてそのスキルを伸ばす「スーパーコーチ」を取り入れたのです。
別の例です。米国のある金融機関では、「トップセールスがトップマネージャーに化けることはほとんどない」と割り切り、営業成績に関係ない要素で将来の営業リーダーを選別するやり方をしています。平均以上の営業能力があるかは重視されますが、トップ営業である必要はないのです。人間関係、人間性、戦略性、ソフトリーダーシップの4つで評価して、選別された営業パーソンをマネージャーとして育てています。
もちろん、マネージャーに向いていないものの、営業成績は抜群である人材をつなぎとめることも重要です。多くの営業組織では、トップ営業マンに部下は持たせないものの、マネージャーと同等の肩書と報酬を与え、出世させる仕組みを持っているのです。
最後に、マッキンゼーにおいても、クライアント企業での営業改革をご支援する際に活用する「チェンジリーダー」のやり方をご紹介します。営業改革を推進する際、一番コミットすべきリーダーは経営陣ですが、経営陣だけで組織のすそ野まで改革を浸透させることは難しい。そこで、営業マネージャークラスを「チェンジリーダー」に任命し、通常のマネージャーとしての仕事を一部削り、改革に必要なスキルを営業現場でコーチングしたり、現場にとって身近な改革のロールモデルとして活躍していただく役割を果たしていただきます。