お客様のホームページや公開情報を見れば、その工場がどのような製品を作っていて、どのような客先に出荷しているのかが分かります。
Sさん「対象の工場は半導体の工場でインバーター(直流電流を交流電流に変換する半導体)を作っており、エアコンなどの白物家電や車載半導体など、様々なアプリケーションを一つの工場で作っているみたいです」
Mさん「そうすると、お客様が課題と考えているのは何だと思いますか?」
Sさん「…。思いつきません」
営業パーソンが課題の仮説に行き詰っているときは、フレームワークが役に立ちます。生産関係であればQCD(Quality, Cost, Delivery)、営業・販売関連でれば4P(Product, Price, Place, Promotion)といった著名なフレームワークがありますので、これを鍵にして質問をします。
Mさん「顧客の課題は生産コスト(Cost)か、サイクルタイム(Delivery)なのか、製品の質・歩留まり(Quality)か。それぞれひとつずつ当てはめて考えてみましょう。まず生産コストに課題はありそうですかね?白物家電向け、車載半導体と、それぞれどうでしょう?」
Sさん「エアコンと車載半導体では、同じインバータでも容量が違うので、生産コストはかなり違っていると思います。」
Mさん「なるほど、それをこのお客様は一つの工場で作っているんですね。生産コストの把握に課題はありますか?」
Sさん「もしかしたら、少量多品種で、各製品の生産コストが違いすぎて、製品ごとのコストを正しく把握出来ていないかもしれないです。うちの会社でもそうですが、製造側の固定費の配賦が間違っていて正しいコストを出せないと、営業側で価格設定を間違えて、赤字プロジェクトになるケースがありますよね。」
Sさんのように、自社の状況など良く知っている例を応用して仮説を立てられると非常に良いですが、難しい場合は本人が知っている例を差し向けると良いでしょう。」
Mさん「いい仮説ですね。製造側が製品別のコストを正確に算出できず、価格設定を間違えて損をしているという課題があるのではないか、という仮説ですね。そうするとどんなソリューションがあると解決できますか?」
Sさん「まずは、固定費変動費すべてのコストと、配賦ロジックが見える化されていて、各製品のコストの詳細がいつでも見えると良いですよね。製造コストや原価に変動があれば、それを入力すれば、勝手に配賦しなおして各製品のコストに反映される仕組みで・・・」
お客様の業界に関するある程度の知識は必要ですが、闇雲に情報を調べまくるのではなく、仮説に沿って絞って情報を取り、深掘りしていくアプローチにより、短時間で大筋の顧客ニーズを把握することができます。